オフショア開発とは

オフショア開発とは、海外企業や海外拠点にシステム開発を委託する手法です。日本では近年、人件費高騰の対応やエンジニア不足の解消を目的に、オフショア開発の導入が進んでいます。委託先としては中国やインド、そしてベトナムなど、IT教育に力を入れている国々が人気です。

オフショアで委託する業務は、ソフトウェアやWebアプリの開発だけではなく、システム運用や保守なども海外でおこなうケースが増えています。

【2025年最新】オフショア開発の動向

【2025年最新】オフショア開発の動向

かつて、オフショア開発は「安いけれど品質が不安」という印象がありました。しかし現在は、品質管理やプロジェクト体制が成熟し、信頼できる開発手法として定着しています。

とくにベトナムでは、政府が推進する「決議68号」により、2030年までに民間企業を200万社へ拡大し、GDPへの寄与率を55〜58%に引き上げる目標を掲げています。

ベトナムにおける2025年1月時点のICT関連の企業は2万7,600社、従業者は約126万人に達しています。AIやIoT、ブロックチェーンなどの先端技術に対応できる人材も拡大中です。

こうした背景もあり、近年のベトナムにおけるオフショア開発は、コスト削減中心から「技術パートナー中心」への転換が進み、その地位を高めています。


オフショア開発のご相談ならFPTへ


オフショア開発で実績を残す事業の特徴

オフショア開発を導入したからといって、すべてのプロジェクトが成果を上げられるわけではありません。成功する企業には共通の傾向があり、プロジェクトの性質や進め方に特徴が見られます。ここでは、オフショア開発で実績につながりやすい4つの特徴をみていきましょう。

大規模で中長期のプロジェクトを計画的に進められる

海外拠点と連携するには、開発チームのメンバー同士が理解を深める準備期間が不可欠です。そのため、大規模で中長期的な体制を組めるプロジェクトほどメリットが大きく、人材育成やノウハウ共有の時間が取れるため、生産性が向上して品質も安定しやすくなります。

一方、短納期の案件では要件整理や設計に十分な時間が取れないため、調整コストが増えがちです。継続的に改善できる体制であるほど、成果を出しやすいのです。

国内固有の商習慣や仕様に依存しない開発内容

海外のエンジニアと円滑に連携するためには、日本独自のルールや商習慣に左右されにくい開発テーマが望ましいといえます。

例えば、日本特有の仕様が多い会計システムや業務管理ツールは、仕様の背景説明に時間を要し、文化に大きな違いがあれば理解されにくいことがあります。

オフショア開発で成功している企業は、このような環境依存を抑えて、ルールを明確にした仕様書をチームで共有し、だれが見ても理解できる状態を整えているのです。

仕様が明確で構造がシンプルな開発内容

複雑な開発内容は、言語や文化の違いが障壁になり共有が難しくなります。

これに対し、仕様が明確でシンプルなロジックのシステムやソフトウェアの開発ならば、そのリスクを抑えることが可能です。とくに、AIやデータ分析・解析など、世界的に共通した定義に基づく分野は、認識を合わせやすい傾向にあります。また、開発工程での説明やレビューも簡略化できるため、開発スピードと品質の両立もしやすくなります。

オフショア開発を効果的に活用したい場合は、シンプルな設計を採用することがポイントの1つです。

海外でも普及している製品や技術を採用

世界的に利用されているプラットフォームやフレームワークをプロジェクトに使用することで、海外のエンジニアの経験値を生かしやすくなります。

例えば、SNSアプリやECサイトのように共通した仕様が多いプロダクトならば、開発の作業効率が上がり品質も安定します。また、海外拠点と同一の開発環境を整えることで、検証や修正もスムーズにおこなえるでしょう。国内外で共通の技術をベースにしてチーム作りができる企業は、オフショア開発で実績を上げやすくなります。


オフショア開発で成果を出しやすい分野

さまざまな分野でオフショア開発は導入されていますが、それらすべてで同水準の成果を得られているわけではありません。成功事例の多い分野には、仕様の明確さや標準化のしやすさといった共通点があります。ここでは、成果につながりやすい代表的な分野を紹介します。

オフショア開発で成果を出しやすい分

Webシステムや業務システム開発

Webサイトや予約システム、ECサイトなどは、オフショアを活用するシステム開発の代表的な分野です。CMSなど共通の技術基盤を使うため、海外のエンジニアにも仕様を理解しやすく、効率的で高品質な成果を上げられます。決済や会員管理などの汎用機能を備えた開発についても、短期間で進めることが可能です。

また、日本と海外ではデザインの好みやUIが異なるため、例えばビジュアルは国内で対応し、実装を海外に任せるといった分業をおこなうと効率的でしょう。

AI・機械学習関連のシステム開発

AIや機械学習分野は、世界共通の先端技術としてエンジニアも増えているため、オフショア開発との親和性が高い分野だといえます。

日本では人材不足が続いていますが、ベトナムやインドでは大学や専門機関でのAI教育が進んでおり、実践的なスキルを持つエンジニアが多くいます。そのため、画像認識や自然言語処理など専門性の高い分野でも、優れたコストパフォーマンスで開発を進めやすくなっています。

スマートフォンアプリ・ソフトウェア開発

スマートフォンアプリ、WEBシステム、ECアプリなどの分野では、オフショア開発のスピード向上とコスト削減を図るプロジェクトが増えています。とくに英語圏やアジア圏の拠点では、グローバル展開向け多言語アプリ開発の実績が豊富です。現地でその国にローカライズされたUI設計を開発できるため、海外へのサービス導入を迅速化できます。日本側は企画と品質管理に注力し、実装は海外で効率的に進めるスタイルです。

テスト・運用・保守工程の外部委託

システムのテストや運用・保守工程は、オフショア開発で成果を出しやすい分野だといえます。工程のテンプレート化と品質基準の統一を図りやすいため、テストケース作成から実行までを一貫して委託できます。これにより、日本国内のエンジニアは、新規開発に専念でき、生産性の向上が見込めます。さらに、時差を活用した24時間保守により、システム障害を早期に発見・対処できる確率が高まります。

中長期的に見ると、品質維持とコスト削減を両立しやすい分野です。

研究開発(R&D)や新技術検証プロジェクト

AIやIoT、ブロックチェーンなど、新技術の研究分野でもオフショア開発の活用が進んでいます。海外に専門チームを一定期間確保して、R&D体制を構築します。

自社の研究テーマについて、試作段階から検証、改良まで同じチームでおこなうことで、迅速な技術実装が期待できます。

R&Dのオフショア開発に適したラボ型開発を導入すれば、研究人材を低コストで長期間確保できるため、スタートアップや中堅企業でも新規開発に挑戦しやすいでしょう。


ビジネスイノベーションを生む新たな目的地ベトナム。
グローバル企業が選ぶべきアジア拠点ベトナムの今を解説


オフショア開発の成功事例と成功要因

適切な体制づくりや目的設定によって、オフショア開発で高い成果を上げる企業が増えています。ここでは、FPTのオフショア開発を活用して成果を上げた3つの事例を紹介します。

情報の円滑な伝達と体制強化により開発規模を4年で約4倍に拡大

コニカミノルタの情報機器事業は、複合機の組み込みソフトの大規模化と国内リソース不足という課題を背景に、オフショア開発を導入しました。オフショア開発において課題となったのが、開発に必要な情報が正しく伝わらない、または情報が不足するというオフショア特有のポイントです。同社はこれを解決したことで、開発規模を4年で4倍にまで拡大させています。

オフショア開発成功のカギとなったのが、コミュニケーションを円滑にするための体制構築です。具体的には、オフショア側の技術担当にPMを設置し、メッセージを直接やり取りできる環境を整備。これにより、両者間の直接的な議論が活性化され、オフショア開発を成功に導きました。

本事例の詳細は、下記にてご確認いただけます。

会社の枠を超えた「ONE-TEAM モデル」と迅速なリソース調達

伊藤忠商事株式会社は、海外約50拠点に24年間導入されていたSAP(基幹システム)をS/4HANA Cloudへ刷新しました。

長年のアドオン開発によって生じたイノベーション対応の困難を解消するため、デジタライゼーションを掲げて目指したのが、徹底的な「Fit to Standard」です。

このアジャイル開発を推進したオフショアプロジェクトが成功した要因の1つに、パートナーであるFPTの迅速なリソース調達力が挙げられます。アジャイル開発中に発生した急な増員依頼にも迅速に対応し、プロジェクトの遅延を防ぎました。また、顧客とベンダーの垣根を取り払い、意思決定を迅速化する「ONE-TEAMモデル」がうまく機能したことも、チームの一体感を生む重要な要素でした。さらに、納品前に現地で社内レビューをおこなう品質確保体制が整っていたことも、大きな安心材料となりました。 これらの要因が重なり、オフショア開発の成功へとつながりました。

本事例の詳細は、下記にてご確認いただけます。

医療機器ソフト開発が15年で170名体制の大規模開発に成長

富士フイルムヘルスケアでは、オンサイトとオフショアを合わせて約170名規模の開発体制を構築しました。これは、同社とFPTが15年にわたりパートナーシップを築き上げた結果です。

この成功要因の1つは、初期の取り組みにあります。組み込み系ソフトウェア開発では、ハードウェアの理解が不可欠なため、キーとなるエンジニアがオンサイトに常駐して知識を共有しました。また、間に立つコミュニケーターの高い日本語能力も成功を支えた要因です。これにより、業務遂行において円滑なコミュニケーションが実現しました。さらに、開発ボリュームが増減する山や谷がある中でも、リソースの増員や削減をフレキシブルに対応できたこともオフショア開発の大きな成功要因です。その結果、定められた製品リリース時期を確実に守ることができました。

会社間でお互いの課題を協力して解決し続けた結果、強固な協業関係の維持につながっています。

本事例の詳細は、下記にてご確認いただけます。


オフショア開発で実績を残すためのポイント

オフショア開発で実績を残すためのポイント

オフショア開発で実績につなげる鍵は、明確な目的設定と密なコミュニケーションです。

導入する際は、達成すべき目標を数値化し、現場で共有・運用できるレベルまで落とし込みましょう。国内外のメンバーが同じ指標で判断できる状態をつくることが重要です。また、週次ミーティングやチャットツールで情報を可視化すれば、進捗遅延や仕様の誤解を防ぐことができます。

オフショア開発では、言語の違いや文化を分かり合うことで信頼関係を築き、効率的な開発体制を維持することが成果を残すための大切なポイントです。


ベトナムでのオフショア開発なら、オフショアとニアショアのメリットを融合させた「ベストショアモデル」で、お客さまのビジネスをエンドツーエンドでサポートするFPTにご相談ください


まとめ

オフショア開発は、コスト削減と人材確保、そして開発スピードの向上を実現できる手段です。成果を上げている企業は、海外のエンジニアを戦略的に活用しています。また、近年はオフショアだけではなく、オンショアやニアショアを組み合わせて業務を最適化する「ベストショアモデル」の導入も進んでいます。自社の課題に合わせて国内外のリソースを適切に配分し、開発体制を整えることが、オフショア開発を成功させる鍵になります。


FPT

この記事の監修者・著者:FPTコンテンツ制作チーム

FPTコンテンツ制作チームは、ITソリューションやデジタル技術に関する情報を発信しています。業界動向や技術トピックについて、記事の制作を行っています。
監修者・著者の詳しい情報はこちら →


関連リンク


関連ブログ:コラム


関連ブログ:オフショア