オフショアとは
そもそも「オフショア」とは何を指すのでしょうか。ここでは、言葉の意味と関連用語との違いを紹介します。

オフショア(offshore)の意味
「オフショア(offshore)」は直訳すると「岸から離れた沖の方」という意味で、海洋・地理分野では陸地から離れた海上を指します。サーフィンでは、陸から海へ吹く風を「オフショア(風)」と呼び、波を整える好条件の一つとされます。
一方、ビジネスでは「業務や拠点を海外に移すこと」を意味する言葉として使われています。とくに、IT業界や製造業では、海外の開発拠点に業務を委託する「オフショア開発」という表現が一般的です。
オンショア(on shore)との違い
オフショアに似た用語に「オンショア(on shore)」があります。これは、企業が国内の拠点で業務をおこなう形態を指します。
オフショアが海外での業務委託や開発を意味するのに対し、オンショアは国内で体制を維持する点が特徴です。例えば、国内のエンジニアチームでシステム開発をおこなう場合はオンショアに該当します。つまり、オンショアはオフショアの対概念です。
オンショアのメリットは、言語や時間の面で円滑な連携が容易で、品質管理や機密保持もしやすい点が挙げられます。
ニアショア(near shore)との違い
「ニアショア(near shore)」は、国内の地方拠点や近隣地域に業務委託をする形態です。例えば、首都圏にある企業が地方のIT企業や開発センターにシステム開発を依頼するケースがこれにあたります。
オフショアが海外拠点を活用するのに対し、ニアショアは、国内の地域ごとに異なる人材コストやリソース状況を活かして、コスト削減と円滑なコミュニケーションの両立をめざす開発体制です。海外ほどのコスト削減は得にくいのですが、言語や文化の違いがほとんどないため、コミュニケーションを取りやすいという利点があります。また、地方創生の観点からも注目されており、東京一極集中の課題を緩和しながら、地方のIT人材を活用できるという大きなメリットがあるのです。
プロジェクトの内容や難易度によってオフショアとニアショアを組み合わせるなど、上手に体制を構築する企業も増えています。
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オフショアの活用が注目される背景
オフショアの活用が広がる背景には、事業の国際展開やグローバル化の加速、そして国内のIT人材不足が挙げられます。とくにIT分野では、レガシーシステムの刷新やDX推進の需要が高まっていますが、国内のエンジニアの数が追いついていません。経済産業省の試算によると、2030年には最大で約79万人のIT人材が不足すると見込まれています。
同時に懸念されるのが、少子高齢化による労働人口の減少です。厚生労働省の統計では、生産年齢人口は今後も減少傾向にあります。
このような国内の課題を背景に、海外の優秀な人材や拠点を活用し、生産性を維持・向上させる仕組みとしてオフショアが注目されているのです。
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ビジネスにおけるオフショアの扱い
「オフショア」は、業界によってその目的や活用方法が異なります。ここでは、金融業界の資産運用とIT業界の開発体制に分けて、その特徴を見ていきましょう。
金融業界(投資)でのオフショア
金融業界で使われるオフショアは、一般的に「自国以外の地域でおこなわれる金融取引」全般を指します。例えば、ケイマン諸島やシンガポールなど、非居住者向けの金融サービスを提供する拠点は「オフショア金融センター(Offshore Financial Centre)」と呼ばれます。政府統計ポータルサイトのe-Statでは、以下のように定義されています。
“主として非居住者と外国通貨による取引のみをおこなう金融機関を包含して、その国の経済には不釣り合いな規模の金融センターを持つ国、または管轄区域を言う。
引用:e-Stat 政府統計の総合窓口”
投資家や企業は、このような地域を拠点にしてファンドを設立し、国際取引をおこないます。また、タックスヘイブンの制度を活用して税負担を軽減しながら資産を運用します。とくに、グローバルな金融市場では、複数国にまたがる投資の仕組みを構築する際にオフショア拠点が欠かせないのです。
一方、税制優遇を悪用したマネーロンダリングなどの温床になる懸念も指摘されています。そのため、国際的な規制強化などが進み、透明性の高い運用を求められているのが、金融業界におけるオフショアの現状です。
IT業界でのオフショア
IT業界でのオフショアは、システム開発やアプリ開発、運用保守を海外拠点でおこなう体制を指します。オフショア開発により、コスト削減や不足するエンジニアリソースを補えるのです。とくに、IT教育が進むベトナムなどへの委託が増加しています。
オフショア開発では、海外の開発チームと日本のプロジェクトマネージャーが連携し、仕様策定からシステム構築、テスト、納品までを分担します。時差を利用して24時間体制で開発を進められる点も大きなメリットです。一方、言語や文化の違いによるコミュニケーションの難しさや、品質管理の基準差によるばらつきが課題となります。
近年では、こうした課題を解消するために、オフショア・オンショア・ニアショアを組み合わせた開発体制を選択する企業も増えています。
ビジネスイノベーションを生む新たな目的地ベトナム。 グローバル企業が選ぶべきアジア拠点ベトナムの今を解説
オフショア開発について
IT業界のオフショアについて、もう少し詳しく見ていきましょう。オフショアの中でもとくに注目されているのが、システム開発を海外拠点でおこなう「オフショア開発」です。ここでは、主な受託国や導入メリット、留意点を整理します。
オフショア開発でベトナムが人気の理由
オフショア開発で人気なのは、中国、インド、ミャンマーなど複数の国が候補に挙げられます。その中でも近年とくに注目されているのがベトナムです。オフショア開発.comの「オフショア開発白書」では、以下のように示されています。
- 1位:ベトナム(42%)
- 2位:中国(26%)
- 3位:その他(8%)
- 4位:インド(7%)
- 5位:ミャンマー(4%)
この資料からも、ベトナム人気がとくに高いことがわかります。その大きな理由は、IT教育の充実と若いエンジニア層の厚さです。ベトナムは国としてITエンジニアの育成に力を入れています。また、ベトナム政府がIT産業を成長戦略の柱に位置づけていることから、海外企業の誘致とインフラ整備を進めてきたことも追い風になっています。
日本企業にとってのメリットでとくに注目したいのは、日本語学習者が多いという点です。日本語が理解できるというだけでも、コミュニケーションにおける課題が軽減され、スムーズなやり取りが期待できます。
日本との時差はわずか2時間で、勤勉で柔軟な国民性が日本企業との相性を高めています。
中国やインドと比べると人件費も安定しており、コストと品質のバランスを取りやすいのも魅力です。
このような理由から、オフショア開発先としてベトナムが選ばれているのです。
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オフショア開発を活用するメリット
オフショア開発は、リソース不足や開発コストの課題を抱える企業にとって有効な選択肢です。主なメリットとしては以下が挙げられます。
- コストの削減
- 海外の優秀な人材の採用
- 技術力や開発体制の強化
オフショア開発の最大のメリットはコスト削減です。日本ではエンジニアの人件費が高騰し続けていますが、とくにベトナムでは相対的に低コストで高スキル人材を確保できます。契約形態が柔軟なため、国内に新たな開発拠点を設ける必要がない点も大きな利点です。
また、海外の優秀なエンジニアを採用できる点もメリットです。理系教育が盛んなアジア圏では、とくにAIやビッグデータなどの先端分野に対応できる人材を見つけやすくなっています。
さらに、プロジェクト内容に応じて専門チームを構築できるため、社内にない技術を取り入れやすく、結果として技術力や開発体制の強化につながります。
オフショア開発を活用するデメリット
オフショア開発には多くのメリットがありますが、課題もあります。とくに以下のようなデメリットには注意が必要です。
- 海外拠点とのコミュニケーションの難しさ
- 品質のばらつき
- セキュリティのリスク
最も課題となりやすいのが、オフショア先の開発チームとの意思疎通でしょう。言語の違いはもちろん、業務進行の考え方や納期への意識差から生じる誤解は、想定外のプロジェクト遅延につながる場合があります。
これを解消するには、定期的なミーティングや詳細な仕様書の作成と共有、双方の文化に通じたブリッジSEによる調整が欠かせません。
また、品質のばらつきもデメリットの一つです。品質管理の基準は国や企業によっても異なるため、日本の基準から見ると、不十分な成果物になってしまうこともあります。
セキュリティについては、離れた拠点間でのデータ授受が発生するため、リスクは高まりやすく、データ共有の方法によっては情報漏洩の懸念も伴います。
そのため、VPN通信やアクセス権限の管理を徹底し、現地スタッフへのセキュリティ教育をおこなうなどの対策が必要です。
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まとめ
オフショア開発は、海外拠点を活用して人材不足や開発コストの課題を解決する手段のひとつです。国内だけでは確保が難しくなったIT人材を補い、開発スピードや競争力の向上につなげることができます。しかし、開発のすべてを海外に任せてしまい、品質や進捗管理の面で課題が生じるケースも少なくありません。
そのため近年では、プロジェクトの内容に応じて国内拠点のオンショア、地方拠点のニアショア、海外拠点のオフショアを組み合わせて開発体制を構築する企業が増えています。そして、この考え方を体系化し、実践レベルで提供しているのがFPTの「グローバルベストショアモデル」です。
このモデルは、オンショア・ニアショア・オフショアの3つの領域を連携させて、地域ごとの特性や強みを最大限に活用します。単純な海外委託ではなく、世界の開発拠点を組み合わせて機能させることで、日本企業のDX推進やレガシーシステムの刷新を支援する仕組みです。
これからオフショア開発を検討している企業や担当者の方は、ぜひFPTの「グローバルベストショアモデル」をご検討ください。
 
この記事の監修者・著者:FPTコンテンツ制作チーム
FPTコンテンツ制作チームは、ITソリューションやデジタル技術に関する情報を発信しています。業界動向や技術トピックについて、記事の制作を行っています。
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