※本記事は日経ビジネス「Global Intelligence Hub」に掲載された記事を転載したものです

FCJの小野内氏はグローバルベストショアモデルについて、「オンショア、ニアショア、オフショアを組み合わせ、3つの地域から企業のシステム開発を支援する手法だ」と説明した。

実際の事例として、米国の自動車会社のケースを紹介した。米国でのオンサイトのサポートに加え、コスタリカやコロンビアといった同じタイムゾーンの地域からのニアショアと、インドなどタイムゾーンが異なる離れた地域からのオフショアを組み合わせているという。「色々な地域を組み合わせることで、技術力の高い要員を確保しながらコストを抑えることや、地政学リスクに備えることができる」(小野内氏)。


日本企業に対しては現地でのオンショアに、沖縄拠点などによるニアショア、ベトナムなどのオフショアを組み合わせて提供する方針だ。


中国・大連に新拠点を開設 

FPTはグローバルベストショアモデルを発展させるため、毎年1〜2カ国への進出を続けている。2023年はメキシコに進出し、2024年3月には中国・大連に拠点を設けた。
大連拠点の開設は、日本企業へのサポートを強く意識したものだという。「大連には日本語スキルを持ったIT人材が20万人いるといわれている」(小野内氏)。そういった人材を積極的に採用して日本企業をサポートすることで、「日本企業はより上流の工程に集中し、人材の不足に対応できるようになるはずだ」(同)。


これまで日本企業が大連に委託してきたシステム開発業務の一部を、ベトナムに移管することも考えている。小野内氏は「大連の方がベトナムよりも、日本企業の上流工程をサポートしやすい場合もあるだろう。そういったケースでは日本企業が最上流、大連が上流、ベトナムが下流、といった具合に担当を分けることでリソースを有効活用できる」と説明する。


中国には多くの優れたIT人材がいるため、これまで日本以外の多くの地域の企業もオフショア開発を委託してきた。しかし最近は欧米企業や金融系企業を中心に、地政学リスクから中国でのオフショアを控える動きが出始めているという。


小野内氏は、「今後中国は、国外からシステム開発業務を受託しにくくなるかもしれない」とし、「そういった場合に備えて、中国国内からの仕事も受けることができるよう体制を整えていく」と続けた。これにより長期にわたり優秀なIT人材を確保し続けられれば、将来再び日本をはじめとした諸外国からの需要が高まった際にスムーズに対応できるというわけだ。


レガシーシステム対応支援に注力

FPTはグローバルベストショアモデル以外にも、日本企業に対する様々な支援策を考えているという。
そのうちの一つが、COBOLで構築されたレガシーシステムへの対応だ。小野内氏は「COBOLで構築されたレガシーシステムに今後どう対応するかは大きな社会課題となっている」と指摘し、「我々も課題解決をご支援したい」と続けた。


FPTは現在、「COBOL Park」という構想を掲げており、これに基づいて日本企業を支援していく計画だ。COBOL Parkは、企業の状況に合わせてレガシーシステムを延命するか刷新するかアドバイスをしたり、必要なITリソースを提供したりするという。ITリソースについては、「ベトナムにCOBOL技術者の養成機関をつくって毎年1000人単位で技術者を育成する」(小野内氏)。


日本企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)を進めるうえで必要になるシステムやデータの統合、業務プロセスの標準化なども支援するという。現在のところ、多くの日本企業が自社内のDXに意識を向けているが、「将来的には企業間、産業間でのデータ共有に取り組む必要がある。その点はベトナムが進んでいるので、これまでの知見を生かしてご支援したい」(小野内氏)。

 

日本企業の東南アジア進出もサポートしたい

日本企業がベトナムをはじめとした東南アジアに進出する際の支援も考えているという。小野内氏は「日本のマーケットが今後縮小していく中で、ベトナムなど東南アジアに活路を見いだそうとする日本企業は多くあるはずだ。我々は日本企業と東南アジア市場をつなぐ架け橋になりたい」と意気込んだ。


FPTグループはベトナムにおいて、IT以外にも小売りや教育など様々な事業を展開している。現在ベトナムにおいては、同社サービス利用者のユニークIDを約5400万件持っているという。「例えばベトナム国内であれば、当社グループが持つ様々なタッチポイントやデータを駆使して、日本企業のビジネスをご支援できるはずだ」(小野内氏)。


小野内氏は「ご紹介したように、FPTはオフショアでコストが安い、という以外の様々な価値をご提供できるようになっている」と語り、「日本企業の皆様と共創を前提としたエコシステムを構築し、共に成長していきたいと考えている」と続けた。


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