人工知能(AI)とは

国際標準規格「ISO/IEC 22989(情報技術)」によれば、人工知能とは「人が定義した目的に基づいて、コンテンツ、予測、レコメンド(推薦)、あるいは意思決定といった出力を生成する工学的なシステム」と定義されています。

例えば、チャットボットが質問に応答したり、テーマに沿ったイラストを自動生成したりするなど、コンピュータが自律的に出力を生み出す仕組み全般を「人工知能」と呼んでいます。


人工知能の捉え方

人工知能はその機能に応じて「強い人工知能」と「弱い人工知能」に分類されることがあります。強い人工知能がいわゆるAGI(汎用的人工知能)であり、弱い人工知能とは汎用性を持たない人工知能を指しています。

AGI(汎用的人工知能)はまだ存在しない

あらゆる課題に柔軟に対応し、人間のように思考・判断・学習を行うのがAGIです。具体的には、言語認識や音声認識、画像認識など、あらゆる課題に対応できるシステムが、AGIだといえます。

人工知能研究の究極的な目標とされることもありますが、現段階では実現には至っていません。というのも、現実の課題は多様であり、ひとつのアプローチでは対応しきれないほど複雑なためです。

特定の領域では人間を凌駕する能力を発揮

一方、画像認識や言語生成など、特定の課題に特化した人工知能はすでに高い性能を実現しています。このような人工知能は「弱い人工知能」と呼ばれています。大量のデータをもとに入力と出力の関係を学習し、未知のデータに対しても適切な応答を返すことができます。実際に、画像の識別や自然言語の処理といった分野では、既に人間の精度を上回る例も存在しています。


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人工知能の精度が大幅に向上した理由

人工知能の概念自体は20世紀中頃から存在していましたが、現在のような実用段階に達したのは近年の技術進歩によるものです。そのターニングポイントとなったのがディープラーニング(深層学習)の登場です。カナダ・トロント大学のジェフリー・ヒントン教授らが2006年に提唱したこの手法は、多層のニューラルネットワークを用いて未知の入力にも対応できる強力なモデルを構築するものでした。深層学習を支えるためには高性能な演算処理装置と大容量のメモリが不可欠ですが、半導体の微細化によるGPUの高性能化や記憶領域の大容量化によって、それが現実のものとなりました。

さらに、近年では拡散モデルのような新しいアルゴリズムの登場により、画像や文章を人間のように自然に生成できる「生成AI」が実現し、人工知能の表現力と実用性は飛躍的に向上しました。

人工知能黎明期からシンギュラリティまでのタイムライン(© Copyright PresentationGO.com)


人工知能における課題

人工知能技術の飛躍的な発展に伴い、社会や人間にもたらす影響への懸念も高まっています。以下では、「2045年問題」と「倫理問題」という2つの重要な社会的課題について紹介します。

(1)2045年問題

2045年問題とは、AIが人間の知能を超えるとされる「シンギュラリティ」が2045年頃に起こると予測されていることから生まれた言葉です。野村総合研究所はイギリス・ケンブリッジ大学との共同研究のもと、2030年前後には労働人口の約49%が人工知能やロボットに代替可能と試算し、代替可能な職業を2015年に公表しました。

また、近年の生成AIの進展により、その予測はさらに現実味を帯びており、漫画家やコピーライターなど、人間にしかできないとされていた仕事でも、自動化が進みつつあります。

(2)倫理問題

人工知能の判断結果に対して誰が責任を負うのかという問題も顕在化しています。国際標準規格「ISO/IEC TR 24028:2020(人工知能)」では、人工知能の信頼性に関する要素のひとつとして「説明責任」や「透明性」が取り上げられています。例えば、医療分野で人工知能が誤診をした場合、その責任の所在は不明確です。

こうした課題に対応するため、欧州連合(EU)では2024年にAI規制法が可決され、リスクに応じたAIの使用管理や、人間の監督を伴う体制の整備が進められています。ただし、技術の進化のスピードに対して法整備の進展が追いついていないという課題が残されています。

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人工知能は多様な手法を適材適所で活用すべき

人工知能には、深層学習や生成AIのようなデータ駆動型の手法だけでなく、「探索アルゴリズム」や「ルールベース方式」などの手法もあります。探索アルゴリズムは回答に至る経路を探す方式で、ルールベース方式はあらかじめ決められたルールに従って処理を行います。

それぞれの手法は、対象とする課題や使用目的に応じて長所と短所が異なります。また、近年は画像生成、文章作成、翻訳、プログラミング補助など、個別の用途に最適化されたAIサービスも急増しています。そのため、状況や目的に応じて適切な手法を選び、使い分けることが求められます。

機械学習が登場するまでの人工知能ブームの変遷(© Copyright PresentationGO.com)


人工知能に関するよくある質問

生成AIとは何ですか?

生成AIとは、画像や文章などのコンテンツを自動で生成する人工知能のことです。ユーザーは「プロンプト」と呼ばれる入力欄にテキストを入力することで、AIがそれに応じたコンテンツを出力します。

代表的な生成AIには、OpenAIの「ChatGPT」やMicrosoftの「Copilot」などの文章生成AIがあり、画像生成の分野では「Midjourney」や「Stable Diffusion」などが広く利用されています。

生成AIは、膨大な学習データに基づいて自然な出力が可能であり、専門知識がなくても直感的に使えるユーザーインターフェースによって、ノーコードで利用できるという利便性の高さが特長です。そのため、ビジネスやクリエイティブの現場でも活用が広がっています。

人工知能(AI)と機械学習との違いは?

人工知能(AI)は、人間の知的作業を模倣する技術全般を指します。一方、機械学習はその中の一分野であり、データからパターンや規則性を学習し、入力に対して適切な出力を導く技術を指します。したがって、機械学習は人工知能の一部と位置づけることができます。

機械学習には、深層学習のような“ブラックボックス化”した複雑なモデルだけでなく、古くから統計学で用いられてきた手法も含まれます。

人工知能も同様に、すべてがブラックボックスではありません。「もし〜なら〜する」といったルールを人間があらかじめ設計し、それに従って処理を行う「ルールベース型」のAIも存在します。こうしたシステムは判断の根拠が明確であり、“ホワイトボックス”型の人工知能ともいえます。

このように、人工知能と機械学習は密接に関係しながらも、重なる部分と異なる部分を併せ持つ概念だといえるでしょう。

人工知能(AI)を人間にとって理解可能にする技術があると聞きました

いわゆる「説明可能なAI(XAI)」と呼ばれる技術のことを指しています。深層学習のような高度なモデルは、その出力がどのような仕組みで導き出されたのかを人間が理解するのが難しく、ブラックボックスとされがちです。

これに対して、探索アルゴリズムやルールベースのアプローチを用いることで、AIの判断過程を人間が追跡・理解しやすくする試みが進んでいます。こうした説明可能性の確保は、医療や行政など、高い透明性が求められる分野で特に重要視されています。


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まとめ

人工知能は、深層学習や生成AIといった技術によって劇的に進化し、実生活の中で不可欠な存在になりつつあります。医療や創作、業務効率化の領域ではその有用性がすでに証明されています。

その一方で、人工知能が誤謬を犯した場合の責任の所在であったり、人工知能の進化スピードに法整備が追いつかなかったりするなどの課題も残されています。このように、人類と人工知能との共生は、社会全体の重要な課題となりつつあります。



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