はじめに

IT業界のトレンドとなっている「生成AI」は、情報収集やコンテンツ作成、データ分析、アイデア創出などに役立つとして、エンジニアに限らず、多くの方々の関心を集めています。

この生成AIの分野で先駆的な取り組みを行っている企業の一つがMicrosoftです。2019年から巨額の投資を行い、OpenAIともパートナーシップを築きながら技術開発を進めてきました。その成果である「Microsoft Copilot」は、単体での利用はもちろん、「Microsoft 365」や「Microsoft Dynamics 365」といったMicrosoftの主要製品にも組み込まれています。

本記事では、Microsoftの生成AI戦略と、Microsoft Copilotを活用したMicrosoft Dynamics 365によるソリューション事例をお伝えします。

 

最新トレンド:Microsoftの生成AI戦略

Copilotは、2021年に開発者向けのコード補完ツール「GitHub Copilot」として登場しました。その後、一般向けの生成AIサービスとして進化し、現在では「Microsoft 365」や「Microsoft Dynamics 365」、「Microsoft Windows 11」など、あらゆるMicrosoft製品に組み込まれています。

GitHub Copilotはコードの補完や提案などによりコーディング作業を、Microsoft 365 CopilotはWordやExcelやOutlook、Teamsなど、Microsoft 365の各種アプリケーションにおいて、資料作成やデータ処理、アプリケーション連携などをサポートしてくれます。Microsoft Windows 11 Copilotでは、Copilot がOSの設定変更やトラブルシューティングなどをサポートしてくれます。様々なMicrosoft製品を生成AIによって便利なものに進化させています。
短期間で次々と画期的な新機能が追加されており、Copilotを活用したDXの推進にも様々な成功事例が生まれています。

 

顧客対応業務の品質向上

問題の発生時の診断や、トラブルシューティング、顧客対応の準備などをAIが担当することで、顧客対応業務の負担を減らし、品質向上につなげることができます。問題の内容を判断し、適切な担当者へつなぐ業務や、顧客の会話の内容分析などにもAIが活用されています。人とAIによるハイブリッドなオペレーションにより、Microsoftは30~40分かかっていたサポートエンジニアの業務プロセスを50%圧縮しました。
(参照:https://www.microsoft.com/en/customers/story/1734666313278350478-microsoft-copilot-in-dynamics-365-customer-service-united-states?culture=ja-jp&country=jp)

 

在庫やサプライチェーンの最適化

購入、製造、在庫、倉庫のプロセスの管理にAIが活用されています。需要予測や顧客とのリレーションシップの分析、AIを活用したガイダンスなど、流通業や小売業でもAIが活用されています。BartekはDynamics 365 と Power Platformを活用し、在庫切れの減少と注文当たりの労働時間の減少を達成しています。
(参照:https://www.microsoft.com/en/customers/story/1627196197259563314-bartek-ingredients-chemicals-dynamics-365?culture=ja-jp&country=jp)

Copilotはさらなる進化を続けており、現在は新たに、営業、サービス、財務など、個別の業務に特化して支援を行うことができる自律エージェントを開発していくことが発表されています。
(参照:https://www.microsoft.com/en-us/dynamics-365/blog/business-leader/2024/10/21/transform-work-with-autonomous-agents-across-your-business-processes/)

 

MicrosoftのDynamics 365とCopilotを活用した業務効率化ソリューション

Microsoft Dynamics 365(以下「Dynamics 365」とする)は、ERPとCRMの両方の機能を備えたプラットフォームです。会計、人事、販促、顧客サービス、小売、ロジスティクス、製造など、さまざまな業務領域に対応した複数のモジュールによって構成されます。各モジュールは独立して運用される一方で、データはMicrosoft Dataverseと呼ばれるデータ管理基盤で一元管理され、モジュール間でシームレスに共有することができます。

このDynamics 365とCopilotを組み合わせて活用すると、情報収集やドキュメント作成、データ分析、チーム連携、進捗管理といった業務を大幅に効率化することができます。ここで、Dynamics 365とCopilotを活用した業務効率化の具体例を2つ紹介いたします。

 

[導入企業]

顧客のPCや複合機、ネットワーク機器などの清掃作業を行う清掃会社様

[業務内容]

  • 各フロアにあるPCや複合機などを作業指示書に従って清掃し、完了後に作業報告書を作成して、お客様にメールで報告する
  • 清掃作業の作業者は日本人ではなくベトナム人※これは、各業界で人手不足が深刻化し、外国人労働者の積極採用が進んでいる状況を考慮している

[解決のためのソリューション]

ソリューションとしては、Dynamics 365 Field Service(以下「Field Service」とする)を活用します。Field Serviceは、Dynamics 365モジュールの一つで、現場保守などに関わる業務を一元管理します。

このField ServiceとField Serviceに備わったCopilot機能を活用して、作業指示書作成、言語変換、報告書作成といった一連の業務プロセスを簡素化し、組織の効率的な働き方を実現します。

[効率化された業務プロセス例]

①:依頼メール受信
 

「FPTによるDynamic365活用モデルとCopilotで実現する保全業務改革案」pdf12ページ。

②:作業指示書新規作成
 

「FPTによるDynamic365活用モデルとCopilotで実現する保全業務改革案」pdf15ページ

③:作業指示書作成完了
 

「FPTによるDynamic365活用モデルとCopilotで実現する保全業務改革案」pdf19ページ

日本語の作業指示書をベトナム語に変換します。また、Field Serviceに記録されている情報を参考にして具体的に実施すべき作業内容を記載していきます。このときもCopilotを活用するため、作業が迅速に行われます。

④:現場作業員のモバイル端末
 

「FPTによるDynamic365活用モデルとCopilotで実現する保全業務改革案」pdf20ページ

現場にいる作業員が、支給されたモバイル端末からField Serviceにアクセスし、指示通りに清掃作業を行います。

⑤:作業報告書
 

「FPTによるDynamic365活用モデルとCopilotで実現する保全業務改革案」pdf23ページ

最後に作業報告書を作成し、フラワーホライズン物流の鈴木さんにメールで報告します。
なお、Field Serviceには、顧客に関する情報や過去の清掃作業に関する情報が記録されているため、Copilotを活用することで、さまざまな広がりが考えられます。

例えば、Field Serviceにある訪問会社、訪問日、作業者、作業内容、作業時間などのデータを活用することで今後の作業計画・作業シフト表の自動作成が可能となります。また、Field Serviceにある顧客の機器情報やリース契約情報などデータを活用することで今後の機器の購買・リースに関する提案なども可能となるでしょう。

 

まとめ


Microsoftは、「Do more with less」というステートメントを掲げています。これは、「より少ないもので、より多くのことを成し遂げる」という意味です。本記事の内容により、「Do more with less」をイメージしていただけたのではないでしょうか。

FPTはMicrosoftのパートナーとして、Dynamics 365とCopilotを活用した業務効率化に関するコンサルティングや導入支援などを行っています。今回紹介した事例以外にも 様々なユースケースに対応が可能です。業務効率化とDX推進をご検討の場合は、ぜひFPTのソリューションをご検討ください。