はじめに

近年、AIの進化は目覚ましく、特に生成AIはビジネスを大きく変革する可能性のあるテクノロジーとして、多くの企業の注目を集めています。

生成AIは、簡単にいえば、「既存のデータを活用して、ユーザーが求める回答やコンテンツを生成する技術」です。そのため、生成AIプロジェクトの成否は、データに大きく左右されるといえます。

本記事では、データというものにフォーカスし、企業が生成AIプロジェクトを成功させるための重要なポイントを解説します。

 

企業における生成AIの導入状況

近年、生成AIの導入を検討する企業が増えていますが、一方で、PoC(概念実証)の段階で止まり、その先の実業務への適用が進まない事例も少なくありません。

アメリカの大手ITアドバイザリー企業Gartnerが2024年7月29日に発表した調査結果によると、「データ品質の低さ」「コストの増大」「ビジネス価値が不明確さ」などの理由から、2025年末までに生成AIプロジェクトの少なくとも30%がPoC(概念実証)後に見送られてしまう可能性があるとのことです。

Gartnerに所属する著名なアナリストRita Sallam氏は、この調査結果を踏まえ、次のように述べています。

「2023年の一大ブームを経て、企業の幹部は生成AIに対する投資からの見返りを心待ちにしている。だが、企業はその価値を証明して収益化するのに苦労しているのが現状だ。プロジェクトの間口が広がるにつれて、生成AIモデルの開発と導入に金銭的負担を感じることが増えている」

(出典:https://www.gartner.com/en/newsroom/press-releases/2024-07-29-gartner-predicts-30-percent-of-generative-ai-projects-will-be-abandoned-after-proof-of-concept-by-end-of-2025)

 

生成AI導入の鍵はデータにある

生成AIプロジェクトを成功させるためにどうすればよいのでしょうか。

基本的なことではありますが、データの重要性を十分に認識することが大切です。単にデータを集めて生成AIに適用するだけでは不十分でしょう。データを最大限に有効活用するための仕組みや環境が用意されていることが非常に重要で、生成AIはその上ではじめて真価を発揮します。

では、そのような点を踏まえて生成AIプロジェクトを進めるとした場合、どのような課題があるのでしょうか。主に次のようなものがあげられます。

データ活用の目的が不明確

データ活用の目的が明確でないと、適切なデータの選択や効果の測定が困難になる

データの収集・管理にコストがかかる

データの収集・管理にコストがかかると、十分なデータ量を確保しにくい

データの取り扱いが不十分

整理されていないデータや品質の悪いデータが多いと、出力精度などに影響が出る

これらの課題に対応することが、生成AIプロジェクトを成功へと導く鍵となります。対応策は次の通りです。

データ活用の目的を明確にする

生成AIを活用する目的を具体的に設定することで、目的に即したデータの選定が可能となる

データを整備する

分散していたり形式が異なっていたりするデータを整備する

ータ収集・管理の仕組みを構築する

データを効率的に収集・管理する仕組みを構築することで、大量のデータを扱えるようになる

データの価値を高める

単なるデータを、分類や構造化、関連付けなどを行うことにより、人間が知識として活用できるレベルにする

これらの解決策を踏まえることで、生成AIの導入と業務効率化を成功させた事例をご紹介します。

 

生成AIの導入事例:航空機故障診断・対策提案を実現する仕組み

[顧客の課題]

航空機は、着陸してから離陸するまでの期間は利益を生み出さないため、この期間をできるだけ最小化するため、航空機のメンテナンス時間を削減したい。メンテナンス時間が長期化する理由として次の3点があげられる。

  • 必要なデータを探し出す作業が手探りで行われている
  • 解決策の特定に時間がかかっている
  • 熟練技術者が持つ知識やスキルの継承が適切に行われていない

[ソリューション]

生成AIを活用し、技術者がメンテナンス作業に必要な情報を正確かつ迅速に取得できる仕組みを導入。具体的には、マニュアル、CAD図面、パーツデータ、過去の修理履歴、熟練技術者の手書きメモなどの情報をナレッジ化し、技術者が自然言語で問い合わせることで、AIが自動的に適切な解決策を提示できるようにした。

このソリューションにより、メンテナンス作業の品質とスピードが向上し、結果として航空機の稼働率が向上し、収益性も改善しました。
また、初回修理率が高まり技術者の負担が軽減された、熟練技術者から若手技術者への技術継承が容易になった、といった効果も得られました。
こうした仕組みが実際に機能し、成果をもたらした背景には適切なデータ収集や、データの整理、分類などの実施があります。

 

まとめ

生成AIの導入が思うように進んでいない企業は少なくないですが、成功事例も確実に存在しています。

ここで重要なのは、単に技術を導入するだけではなく、データ活用の仕組みや環境をきちんと設計・構築することです。そうすることで、生成AIはその真価を発揮し、ビジネスにも革新的な変化がもたらされることでしょう。

こうしたAI活用をさらに推進するための仕組みとして、FPTジャパンホールディングス株式会社(以下FPT)とNVIDIAによる新サービス「FPT AI Factory」が2025年2月15日よりスタートします。FPT AI Factoryは、FPTとNVIDIAが共同開発したAI開発の総合的なソリューションで、主に次のような特徴があります。

  • 高性能なインフラ、プラットフォーム、AIアプリケーションを包括的に備えており、AI製品ライフサイクル全体をサポート
  • 最新のNVIDIA GPU(Graphics Processing Unit)を搭載した強力なコンピュータを活用することで、大規模なAI処理を高いパフォーマンスで実現

FPTはこれからも、企業様が生成AIの可能性を最大限利用できるよう、さまざまな形でサポートしてまいります。