オフショア開発の最新動向・現状

オフショア開発の最新動向・現状

従来、オフショア開発は「コスト削減」が大きな目的でした。しかし近年では、コスト削減に加えて「リソースの確保」や「技術力強化」へと目的がシフトしています。2024年版のオフショア開発白書によれば、ベトナムがオフショア委託先の42%を占めており、首位を独走中です。その背景には、日本企業の深刻なIT人材不足があります。人材を補うパートナーとして、高い技術を持つベトナムに注目が集まっているのです。

ベトナムでは、優秀で若いITエンジニアを育てています。また、基幹システムや先端技術に対応できる企業も増えており、システム開発の幅が広がっていることも人気の要因です。特に注目すべき点は、日本語学習者が多いことです。これにより、コミュニケーションにおける課題が軽減され、日本市場向けの開発に適しているとの高評価に繋がっているのです。

  • 1位:ベトナム(42%)
  • 2位:中国(26%)
  • 3位:その他(8%)
  • 4位:インド(7%)
  • 5位:ミャンマー(4%)
  • 6位:東欧諸国(3%)
  • 6位:フィリピン(3%)
  • 8位:韓国(2%)
  • 8位:バングラデシュ(2%)
  • 8位:タイ(2%)
  • 11位:シンガポール(1%)

また、契約形態も変化してきています。近年では単発の請負契約だけではなく、専任チームを設置するラボ契約が普及しています。つまり、自社の専属開発チームをベトナムに持つ、ということです。ラボ契約をすることで、長期的な開発体制を整えやすくなるというメリットがあります。

このようにベトナムでのオフショア開発は、単に開発コストを削減するだけではなく、高度な技術と安定した体制、優秀な人材の獲得を兼ね備えた拠点となります。


ベトナムオフショア開発の特徴

ベトナムは、高いITスキルを持つ人材が多く、かつ勤勉で親日的な国民性が特徴です。人件費は安価で、さらに時差が約2時間であるため、業務に支障が出る可能性も低く、円滑なやり取りができます。通信インフラや都市の生活インフラが整備されており、開発体制を構築しやすい点もベトナムの大きな特長です。日本国内でのIT人材確保が難しい中、その有効な解決策の一つがベトナムでのオフショア開発といえます。

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オフショア開発でベトナムが選ばれる理由8選

ベトナムは、オフショア開発において非常に人気の高い国です。その理由はさまざまですが、ここでは以下の8つの理由について見ていきましょう。

  • ITエンジニアの人件費が安い
  • ITエンジニアの技術力が高い
  • 日本語人材が豊富
  • AIなどの先端テクノロジーにも対応
  • 日本との時差が少ない
  • 情報通信のインフラが整備されている
  • 政治的なリスクが少ない
  • 品質管理・プロジェクト管理で高評価

ITエンジニアの人件費が安い

ベトナムは、ITエンジニアの人件費が安価であるという魅力があります。日本と比べると大幅に安価とされており、コスト削減になるのです。ベトナムのITエンジニアの人月単価を見てみると、ブリッジSEを含めた費用でも日本国内より安価に抑えられます。これは、ベトナム政府のICT産業育成政策や、若い労働人口が多いという背景が要因です。

ベトナムは、アジア圏でも依然としてコストメリットが大きいため、中規模から大規模案件での高いコスト削減効果が期待できます。また、AIやブロックチェーンなどの先端分野の対応力も高まっているため、質の高い開発パートナーとしても大きな戦力になるでしょう。

ITエンジニアの技術力が高い

ベトナムのITエンジニアは、高い技術力で注目を集めています。これはベトナム政府がICT先進国を目指し、積極的に人材育成に取り組んでいることが大きく影響しています。政府は2025年までに110万人のIT技術者を育成する目標を掲げており、教育機関では実践的なプログラミング教育やインターンシップの導入が進められています。

また、平均年齢が約31歳(30.9歳)と若く、新たな技術の習得に意欲的な人材が多いことも、ベトナムの強みの一つです。近年では、オフショア開発案件全体として、AIやクラウド技術などのプロジェクト対応可能な企業が増えています。こうした環境により、先端スキルを備えたITエンジニアが豊富に揃っている点は、ベトナムをオフショア開発先として選ぶうえでの大きな魅力となっています。

日本語人材が豊富

ベトナムは日本語人材が多いため、オフショア開発において優位性があります。JAPANFOUNDATION国際交流基金の「2021年度 海外日本語教育機関調査」によれば、ベトナムの日本語学習者は169,582人(2021年時点)に達しており、東南アジアにおいてはインドネシア、タイに次ぐ3位となっています。また、東南アジアにおけるオフショア開発の主要国(ベトナム・フィリピン・ミャンマー)ではトップに位置します。

東南アジアのオフショア開発主要国 日本語学習者(人) 10万人あたりの日本語学習者(人)
ベトナム 169,582 176.3
フィリピン 44,457 40.8
ミャンマー 19,124 37.1

参考:国際交流基金 「2021年度 海外日本語教育機関調査」


ベトナムに日本語学習者が多い背景には、日本文化や日本企業への関心の高さがあります。一部の教育機関では、日本語を第二外国語として教えるなど、日本語スキルを活かしたビジネス人材の育成に力を入れています。例えば、オフショア開発におけるブリッジSEやPMのポジションでは、開発チームと日本側の橋渡し役として、日本語人材が重宝されます。日本語人材が豊富であることは、コミュニケーションが円滑になるだけでなく、プロジェクトの品質向上にも大きく影響します。

AIなどの先端テクノロジーにも対応している

オフショア開発市場では、AIやブロックチェーン、IoTなどの先端技術の案件が増えています。

  • 1位:Webシステム開発(業務系)(29%)
  • 2位:Webシステム開発(サービス系)(27%)
  • 3位:スマホアプリ開発(16%)
  • 4位:基幹システム開発(13%)
  • 5位:サイト制作(HP制作/EC構築)(6%)
  • 5位:先端系(AI/ブロックチェーン/IoT/VR・AR)(6%)
  • 7位:組み込み開発(3%)

ベトナムでは、こうしたニーズに対応できる企業が増えています。これは、政府のICT強化方針や大学での実践的教育を背景に、ITエンジニアが新たな技術に積極的に挑戦できる環境が整っていることが、こうした成長の大きな原動力となっているといえるでしょう。

日本との時差が少ない

ベトナムと日本の時差は約2時間(日本のマイナス2時間)と小さく、オフショア開発における大きな強みになっています。時差が小さいという地理的条件は、Webミーティングなどのリアルタイムでのコミュニケーションを可能にし、業務の遅延や意思疎通の齟齬を防ぐなどの効果があります。

例えば、ベトナムのIT企業における一般的な業務開始時間は午前8時ごろであるため、日本時間では午前10時ごろに当たります。両国の就業時間が重なっているため、日中の連絡や進捗管理もスムーズです。また、日本からベトナムへの直行便で5時間から6時間程度で渡航できるため、現地への訪問が必要な場合も便利な立地だといえるでしょう。

こうした条件がそろっていることも、ベトナムがオフショア開発先として適した選択肢となっている理由です。

情報通信のインフラが整備されている

情報通信インフラが整備されている点も、ベトナムがオフショア開発先に選ばれる理由です。2025年初頭におけるベトナムのインターネット普及率は78.8%に達しています。また、携帯電話接続数は約1億2700万件(127 MILLION)で、総人口の126%です。

ベトナムにおける接続デバイスおよびサービスの導入と利用状況概要(2025年2月)

出典:「DIGITAL 2025 VIETNAM

ブロードバンドによる高速かつ安定したネットワーク環境を確保できているため、Webミーティングやデータのやり取りもスムーズに行えます。また、公共施設(レストランやカフェ含む)でも無線LAN(Wi-Fi)が普及しているなど、インターネット環境で困ることはないでしょう。

その他、道路や治水などの生活インフラ(社会インフラ)も強化されていますので、輸送や物流面の条件も良好だといえます。

政治的なリスクが少ない

ベトナムは、政治的に安定した国です。それは、オフショア開発を行う企業にとって安心材料となります。ベトナムは長年にわたり、安定した社会情勢を維持しており、反政府デモなどがほとんど発生していません。そのため、日本から現地へ出張したり、長期滞在が必要となったりする場合でも、リスクが低いという特徴があります。

例えば、ベトナムよりも平均賃金が低いことで知られるミャンマーでは、クーデターが発生するなど、政治情勢が不安定な状況が続いています。一方で、ベトナムは政治的に安定しており、リスクが少ない国として評価されています。また、ベトナムは親日的な国民性も知られており、日本企業との信頼性も高いといわれています。

品質管理・プロジェクト管理で高く評価されている

ベトナムでのオフショア開発は、品質管理やプロジェクト管理の面でも高く評価されています。多くの企業がCMMIレベル3~5の国際認証を取得(代表的な企業であるFPTソフトウェアは、CMMIレベル5を取得)しており、国際基準に沿った体制を整えています。また、ISO 9001、ISO 27001といった品質管理や情報セキュリティに関する国際認証を取得する企業も多く、信頼性が高いことも特徴です。ベトナムのこのような取り組みは、納期厳守や高品質なシステム開発を実現しており、日本企業にとっての「安心できるポイント」になっているのです。

ただし、オフショア開発の発注先を選ぶ際には、認証取得の有無だけではなく、実際のプロジェクト管理手法や進捗報告頻度、課題への対応にどのような実績があるのかを確認することが大切です。信頼できるオフショア開発のパートナーを選定して、開発の安定性と長期的な関係構築を目指しましょう。


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失敗しないためのベトナムでのオフショア開発の会社の選び方

失敗しないためのベトナムでのオフショア開発の会社の選び方

オフショア開発の会社選びには、慎重さが必要で、パートナー選びによってプロジェクトの成功率が大きく変わります。ここでは、以下の観点から会社の選び方を見ていきましょう。

  • 日系か外資か現地法人か
  • 各会社の得意分野はどこか
  • 品質管理やセキュリティ対策は求める水準に達しているか
  • 契約形態はどうか

日系か外資か現地法人か

ベトナムのオフショア開発企業は、大きく3つのタイプに分けられます。それが、日系企業、外資系企業、現地法人です。

日系企業は、日本語対応や日本特有のマネジメントに強く、文化的な相性が高いため、初めてオフショア開発をする際に安心です。外資系企業は、さまざまな国の開発体制に対応しており、先進技術に強みを持っています。そのため、スピード感のある開発や、グローバルな視点でのプロジェクト推進を重視するケースに適しています。現地法人はコスト競争力が高いこと、そしてローカルネットワークやカルチャーを生かした柔軟な対応が魅力になります。

選定をする際には、委託先企業にどの程度の対応を求めるのか、開発スピードはどのくらいなのか、コストはどのくらいか、言語力や文化理解度はどの程度必要なのかを明確にしておくことが重要です。そのうえで、各タイプの企業の実績やチーム体制、運用方法を比較検討するとよいでしょう。特に、過去の案件事例や体制、主要メンバーのプロフィールなどはしっかりと確認しておきましょう。

各会社の得意分野はどこか

ベトナムのオフショア開発企業には、各社それぞれの得意分野や特色があります。

例えば、AIやIoT、ブロックチェーンなどの先端技術が得意な会社や、基幹システム開発を主軸とする会社、モバイルアプリやWebサービス、ECサイト構築の実績が多い会社などさまざまです。中には、テストの自動化や品質保証に特化した会社もあり、それぞれ技術領域やサポート内容が異なります。

各社の得意分野を見極めるには、まず公式サイトや導入事例を確認するのが基本です。特に「開発実績」や「顧客事例」のページは、企業の強みや対応可能な領域を把握するうえで有効です。商談の段階では、過去の類似案件の具体的な内容や、採用した技術について質問することで、企業の実力だけでなく、自社との相性もより明確に確認できます。

品質管理やセキュリティ対策は求める水準に達しているか

オフショア開発を進めるうえで重要なのは、品質管理とセキュリティ対策です。これは、ベトナムでのオフショア開発でも重要な判断基準になります。品質管理では、CMMIやISO9001といった国際認証の取得状況を確認しましょう。開発プロセスや品質基準が標準化されているかどうかを確認する指標となります。

また、セキュリティについてはISO27001取得、データ保護体制の有無、アクセス管理の仕組みを確認しましょう。確認方法については、やはり公式サイトの記載を確認することが基本です。また、会社説明資料をチェックしたり、商談時に具体的な体制を質問したりすることも大切です。

例えば、テストフローやレビューの体制、ソースコード管理や情報漏えい対策などの自社基準を明確にしておき、各項目を比較しながら水準に達しているかを判断します。また、障害発生時の対応手順が、マニュアルなどのドキュメントに整っているのかも確認しておきましょう。これらを慎重に見極めることで、リスクを最小限に抑えながら、自社に合うパートナーを選定することができます。

契約形態はどうか

ベトナムのオフショア開発における主な契約形態には、請負契約とラボ契約の2つの契約形態があります。

請負契約は、納期や成果物、仕様が明確になっているプロジェクトに適した契約形態で、固定予算で進められるのが特徴です。短期集中でのプロジェクトが強みだといえます。ただし、仕様変更が発生すると追加費用が発生するケースがありますので、注意しなければなりません。

一方、ラボ契約では自社専属の開発チームを確保します。専任のエンジニアが複数名いるため、要件変更や仕様追加にも柔軟に対応できることが特徴です。長期間に渡る案件や、プロトタイプなどを作りながら行う開発に向いているでしょう。ラボ契約は、自社内での開発と同じような感覚で活用できるのが強みです。ただし、品質管理や進捗管理については、開発会社に丸投げをせず、日本企業側が定期的に状況確認や指示をして調整を行う必要があります。

契約形態を選ぶときは、各契約の特徴を理解して、プロジェクトの性質や期間を明確にしておくことが大切です。

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まとめ

まとめ|オフショア開発でベトナムが選ばれる理由と失敗しないための会社の選び方

ベトナムのオフショア開発は、コスト面の強みはもちろん、優秀なIT人材や日本語対応力に加え、先端技術への対応力も備えています。ただし、オフショア開発に成功するかどうかはパートナー企業の選び方がカギです。日系企業や外資系企業、現地法人などのそれぞれの企業タイプを理解したうえで、得意分野や品質管理・セキュリティ体制を事前に確認することが欠かせません。プロジェクトによって、請負契約とラボ契約のどちらが向いているかを判断することも重要です。これらのポイントを抑えて、質の高い開発を安心して進められるようにしましょう。



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