AI開発の概要

AI開発とは、人工知能を活用して、予測、分類、推薦、認識、文章生成などを行う仕組みを設計し、実際の業務に組み込める形で実装することを指します。一般的なシステム開発と大きく異なるのは、プログラムの仕様だけでなく、学習に用いるデータの質や量が成果を大きく左右する点にあります。また、AIは一度作って終わりではなく、導入後に利用データや業務環境が変化すれば、精度の見直しや再学習が必要になります。そのため、AI開発では、開発フェーズだけでなく、運用と改善まで含めた長期的な視点が欠かせません。
さらに、AI開発の目的は技術導入そのものではなく、業務課題の解決や新しい価値の創出にあります。たとえば、問い合わせ対応の効率化、需要予測の高度化、不正検知の強化など、具体的なビジネス課題に結びつけて検討することが重要となります。AIを導入すること自体が目的になると、PoCまでは進んでも本番活用につながらないケースがあるため、最初に「何を改善したいのか」を明確にしておくべきでしょう。
AI開発の関連する技術:機械学習と深層学習
AI開発で中核となる技術が、機械学習と深層学習です。
機械学習は、大量のデータから規則性や傾向を学習し、その結果をもとに予測や分類を行う技術といえます。売上予測、需要予測、不正検知、顧客分類など、さまざまな業務領域で活用されています。比較的少ないデータでも活用しやすく、判断根拠を説明しやすい手法が多い点も特徴といえるでしょう。
一方、深層学習は機械学習の一種で、人が特徴を細かく設計しなくても、画像、音声、文章のような複雑なデータから重要な特徴を自動的に学習できます。高い精度を期待できる反面、大量の学習データや高性能な計算資源が必要になることが多く、導入や運用の負荷も大きくなる傾向にあります。近年主流となった生成AIも、深層学習によって作られています。
少ないデータで早く始めたい場合は機械学習、複雑なデータを扱って高精度を求める場合は深層学習が有力な選択肢になる傾向があります。
AI開発の基本的なステップ
AI開発は、構想、PoC、実装、運用という流れで進めるのが一般的といえるでしょう。各ステップで目的や判断基準を明確にしながら進めることで、PoC止まりや導入後の形骸化を防ぎやすくなります。
構想
構想段階では、まずAIで何を解決したいのかを整理します。ここで重要なのは、「AIを使うこと」を目的にしない点です。たとえば、問い合わせ対応の自動化で人手不足を補いたいのか、審査精度を高めて業務品質を向上させたいのか、需要予測を強化して在庫最適化を実現したいのかによって、選ぶべき技術も必要なデータも変わってきます。
この段階では、対象業務の整理、課題の明確化、必要データの有無、期待効果、KPI、投資対効果の見通しなどを確認します。特に重要なのは、現場部門と経営層の認識をそろえることです。現場が抱える課題と経営として目指す成果にずれがあると、後から要件変更が増え、プロジェクト全体が不安定になりかねません。構想段階で目的、対象、成果指標を固めることが、以降の工程をスムーズに進める土台となります。
PoC
PoCは、AIの実現可能性や有効性を小さく検証するための工程といえます。限られた範囲のデータを使って試作モデルを作成し、想定した精度が得られるか、現場で活用する価値があるかを確認します。本番システムの完成度を目指す段階ではないため、短期間で仮説を検証することが求められます。
PoCでは、精度だけを評価するのでは不十分です。現場担当者が結果を理解しやすいか、業務フローに組み込めるか、導入した際にどの程度の効果が見込めるかも合わせて確認していく必要があります。また、データ不足や前処理の負荷、想定よりも説明が難しいといった課題が見つかることも珍しくありません。PoCの役割は、成功を証明することだけではなく、本番導入前にリスクや制約を洗い出すことにもあります。
実装
実装段階では、PoCで得られた知見をもとに、本番利用を前提としたシステムを構築します。モデルの精度向上だけでなく、データ連携、既存システムとの接続、API化、権限管理、監査対応、ログ管理など、実運用に必要な要素を整えていきます。AIモデル単体ではなく、業務の中で安定して動く仕組みとして設計することが重要です。
実装ではユーザーの使いやすさも大きなポイントとなります。たとえば、審査担当者が既存画面の中でAIの判定結果を確認できるのか、問い合わせ担当者が生成AIの回答をそのまま使えるのか、あるいは確認プロセスが必要なのかによって、現場定着のしやすさが変わります。精度の高いモデルでも、運用現場に無理なく組み込めなければ十分な成果は出ません。AI開発の実装では、モデル、アプリケーション、インフラストラクチャを一体で設計する視点が求められます。
運用
AIは導入後の運用によって真価が決まります。実際の業務で使い始めると、学習時とは異なるデータが入力されたり、業務ルールが変わったりして、モデルの精度が徐々に低下することがあります。そのため、稼働状況の監視、精度評価、再学習、障害対応、バージョン管理を継続的に行う体制が不可欠といえます。
加えて、利用ルールの整備や現場教育も欠かせない要素です。特に生成AIでは、誤回答や機密情報の取り扱いに注意しなければなりません。利用範囲を明確にし、どのような場面では人の確認を必須にするのかを定めることで、リスクを抑えながら活用を広げられます。AI開発は「導入して終わり」ではなく、「使いながら改善を続ける取り組み」であることを前提に考えることが大切です。
AI開発をするうえで必要な開発体制・求められるスキル

AI開発を成功させるには、技術選定だけでなく、継続的に改善できる開発体制の構築が欠かせません。使用する言語や開発環境だけでなく、どのような人材が関わり、どのように連携するかまで含めて考える必要があります。
AI開発に利用されるプログラミング言語
AI開発で最も広く使われている言語はPythonです。文法が比較的分かりやすく、TensorFlow、PyTorch、Pandas、NumPyなど、AIやデータ分析に必要なライブラリが充実しているため、学習、前処理、可視化、実装まで一貫して進めやすいことが理由として挙げられます。AI開発の入門から実務まで、幅広く対応できる言語といえます。
そのほか、統計解析に強いR、処理速度が重視される場面で利用されるC++、ブラウザ上でAIを扱いやすいJavaScriptなども使われます。どの言語が最適かは、扱うデータ、必要な性能、既存システムとの連携方法によって異なります。流行だけで選ぶのではなく、開発目的と運用条件に合った言語を選定することが重要です。
AI開発環境の構築
AI開発環境では、学習に必要な計算資源と、本番運用に求められる安定性を両立させる必要があります。比較的軽い機械学習であればCPU中心でも対応できますが、深層学習や生成AIを扱う場合はGPU環境が重要になります。そのため、AWS、Google Cloud、Microsoft Azureなどのクラウド基盤を利用するケースが多くなっています。
また、AI開発環境の構築では、学習用サーバーを用意するだけでは不十分です。データ保管先、アクセス権限、ログ取得、デプロイ手順、再学習の流れ、障害発生時の対応まで含めて設計する必要があります。PoC用の簡易環境と本番環境の差が大きいと、移行時の手戻りが増えやすいため、早い段階から本番運用を見据えた環境設計を意識することが重要です。
エンジニア・開発体制の整備
AI開発には、PM、データサイエンティスト、AIエンジニア、アプリケーション開発者、インフラ担当、業務部門のエンジニアなど、多様な人材の連携が求められます。特に重要なのは、技術者だけで閉じた開発にしない点です。現場業務を理解する担当者が初期から参加することで、実務に合わない要件や使いにくい設計を防ぎやすくなります。
一方で、必要な人材をすべて社内でそろえるのが難しい企業も少なくありません。その場合は、外部パートナーの活用や、専任チームを継続的に確保しやすいODC(Offshore Development Center:ラボ型開発)も有力な選択肢になるでしょう。重要なのは、短期的な開発だけでなく、運用改善まで支えられる体制を用意することです。AIは継続的な調整が必要なため、導入後も知見を蓄積し続けられるチーム作りが成果に直結します。
AI開発の具体的な事例
AI開発では、要素技術の精度だけでなく、既存業務へどう組み込むか、どのような基盤で継続運用するかが重要となります。ここでは、FPTが取り組む医療・製造分野のAI開発実績を紹介します。
1. 医療分野におけるAI診断支援を中心とした取り組み
FPTは、ベトナム国家イノベーションセンターおよびコニカミノルタと連携し、X線動態解析(DDR)とAIを活用したデジタルヘルスケアの共同研究を進めています。呼吸器疾患の早期診断を支援するAI診断支援ツールの開発に加え、医療レポートの自動生成によって医療従事者の業務負荷軽減と報告精度向上を目指している点が特徴といえます。FPTはAI要素技術の開発だけでなく、医療データ収集システムの構築検討も担っており、AIモデルとデータ基盤を一体で整備しながら、現場実装を見据えて研究を進める開発実績として参考になります。
【関連記事】
⇒FPTはベトナム政府機関およびコニカミノルタと「X線動態解析」およびAI活用のデジタルヘルスケア共同研究検討の基本合意書を締結
2. 製造業におけるAI・クラウド・ロボティクスを活用した基盤開発
FPTは三島光産と協業し、AI・クラウド・ロボティクスを組み合わせた次世代製造基盤の開発を進めています。FPT AI InfrastructureとMK Solution Cloudを連携させることで、ローカル環境の構築負荷を抑えつつ、主要ツールを一元運用できる体制を目指しています。さらに、AI Mentorによる教育標準化も進め、制御システム開発の属人化解消や開発資産の再利用性向上を図る点が特徴といえます。
【関連記事】
⇒FPTと三島光産は、AIを活用した次世代製造基盤構築の協業に合意
まとめ
AI開発を成功させるには、構想、PoC、実装、運用を段階的に進めながら、データ、開発環境、体制を一体で整えることが重要になります。特に本番活用を見据える場合は、モデル精度だけでなく、既存システムとの連携、セキュリティ、運用ルール、継続改善の仕組みまで含めて設計する必要があるでしょう。
事例からも分かるように、AIは適切な環境と運用方針があってこそ現場で機能します。技術先行で導入を進めるのではなく、解決したい業務課題と運用後の姿から逆算して全体設計を行うことが、AI開発を成果につなげる近道といえるでしょう。これからAI開発に取り組む企業は、まず目的を明確にし、自社に合ったステップと体制を整えることから始めるとよいでしょう。
この記事の監修者・著者:FPTコンテンツ制作チーム
FPTコンテンツ制作チームは、ITソリューションやデジタル技術に関する情報を発信しています。業界動向や技術トピックについて、記事の制作を行っています。
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