※本記事は日経ビジネス「DX Insight 2024 summer Review」に掲載された記事を転載したものです

 

はじめに

「2025年の崖」が迫る中、多くの企業でレガシーシステムのモダナイゼーションが急務となっている。システムの老朽化や運用保守人材の枯渇、仕様のブラックボックス化が深刻化しており、一刻も早いシステム移行は喫緊の課題だといえるだろう。こうした課題に対し、ベトナムに豊富なエンジニア人材を擁する。 FPTは、2023年からモダナイゼーションに関する専門組織を組成。日本企業の脱ホスト化を全方位で支援している。

 

脱ホストの専門組織を創設国内ニアショア人員を大幅に増強

DXを実現する上で大きな障壁となっているのがレガシーシステムだ。メンテナンスや改修にかかるコストも高く、今後、COBOLなどのプログラミング言語を扱える人材がいなくなれば機能しなくなってしまう可能性もある。

そこで日本企業では近年、既存資産を生かしながら最新のテクノロジーに適合したシステムへ置き換える「モダナイゼーション」の需要が拡大している。

この流れを受け、2023年にモダナイゼーションの専門組織を発足させたのがFPTジャパンホールディングスだ。同社はベトナム最大のIT企業であるFPTソフトウェアの日本法人。FPTソフトウェアは米国・欧州・アジアの世界30カ国に拠点を持ち、ベトナムを中心に数千人もの優秀なエンジニア人材を擁する。こうしたグローバルな事業展開も大きな強みの1つだ。

 

「当社は2006年から世界各国のお客様向けにマイグレーションを実施しており、プロジェクト経験は200件を数えます。2023年にはレガシーシステムのモダナイゼーションを当社の重要プログラムと位置付け、専門組織を発足させました。お客様企業に近い日本国内で迅速にシステム開発を行うニアショア開発能力を向上させながら、日本企業の脱ホスト化と、今後の保守・運用に関わる人材不足への対応を行っています」と同社の亀山 彰康氏は語る。

FPTは数多くのプロジェクトで蓄積した豊富なノウハウとグローバルな人材力、自社開発ツールや方法論の拡充をベースに、コンサルティングから開発、保守・運用までモダナイゼーションをエンド・ツー・エンドで支援している(図1)。

図1:FPTのレガシーモダナイゼーションサービス

 

移行方式では、リホスト/リプラットフォーム/リアーキテクト/リライト/リファクタリング/リメイクと全ての方式に対応しており、それをどのように決めるかについても、顧客のDX構想やデジタル戦略、EOS(End OfSupport)やROIの観点などを踏まえたコンサルティングを行った上で、要件定義や設計・開発へと進めていく。

「メインフレーム上で稼働している基幹システムは大規模なことが多く、マイグレーションを進める際には、どの領域、どのタイミングで何を行うか、ステークホルダーの役割分担をどうするかなど、作業に漏れがないよう進めることが必要です。そこで当社はマイグレーションの全体像を網羅したテンプレートを用意し、お客様とディスカッションしながら最後の保守・運用までプロジェクト全体を俯瞰して進めるように工夫しています」と亀山氏は説明する。

さらにFPTは、移行先として選ばれることの多いクラウド利用についても、クラウドサービスの専門家によるトータルサービスを提供。現行システムからクラウドネイティブ実装やコンテナ化によるマイクロサービスアーキテクチャへの移行等、クラウド上のアプリケーション開発も全方位で支援している。

 

自社開発ツールで作業工数を大幅に削減

こうしたFPTのマイグレーションを下支えするのが、自社開発ツールのEMT(Eco Migration Tool)である。

「当社ではEMTを近年50以上のプロジェクトで使用しています。EMTではこれまでのプロジェクトで使用した全てのツールを統合・テストし、お客様のレビューを受けながら進化させてきたもの。現在も新しい機能を継続的に追加しており、ツールの精度と速度の向上を図っています」(亀山氏)

EMTの機能の1つが、COBOLやJCLなどの大量のソースコード分析が可能な「現行システム資産分析」である。COBOLならステップ数やバッチ、COPY句といった資産を詳細に分類し、未使用の変数、デッドコードなどを可視化。システム評価に有用な情報を出力する。

また「コード変換」機能は、システムごとに異なるコード変換パターンを分析し、新しいアーキテクチャへのマッピングを行い、移行ポリシーを構築するもの。コード変換率を大幅に向上させる。「過去のプロジェクトで培った変換パターンが蓄積されているため、例えばCOBOLをJavaに変換する際には、保守性の低いCOBOL風のJavaコード“Jabol”にならないよう、正しい構造で変換できるようにしています。SAM/VSAMといった階層型DBをオープンなRDBに変換する際も、70%~ 100%の変換率を実現しています」と亀山氏は言う。

加えて「リバースエンジニアリング」ではソースコードを解析して、設計書として出力することが可能。ブラックボックスになっていた現行プログラムを可視化したり、有識者のノウハウを継承したりする際にも有用だ。

 

人材トランスフォーメーションでマイグレーション後の保守も支援

FPTはシステム移行だけではなく、「ホストのエンジニアがいない」「仕様書が存在しない」「移行方法を整理できていない」といった顧客の課題を解決する人材のトランスフォーメーションもサービスとして提供している。

具体的には、現行システム有識者の退職を見据え、限られた時間を有効利用しながら現在在籍している人材のリスキリングなどを行い、各社のスキルとノウハウを継承。ラボ型体制を構築することでマイグレーションと現行システムの保守業務を同時に実施するほか、マイグレーション後も新システムの保守やDXの推進を継続的に行えるようにしていく。またFPTのメインフレーム開発・保守経験者も2023年時点で1500名以上に拡充しており、2024年にはさらに2500名、2025年には3500名以上に増やす計画だ(図2)。

 

図2:「人材不足」への対応

 

複雑化したシステムを業務に影響を及ぼさないよう移行するには入念な調査と移行計画が必要で、人員だけでなく時間やコストも多くかかる。その手間暇を最小化するFPTのレガシーマイグレーションは、企業DXの展開を加速させる切り札となるだろう。


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