BPOとは?

BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)とは、企業が自社の業務プロセスのうち、主にノンコア業務を外部の専門業者に委託する経営手法です。経理や人事、カスタマーサポート、IT運用などのノンコア業務が主な対象であり、これらを外部に委託することで、企業は限られたリソースを本来注力すべきコア業務に集中させることができます。
この考え方は、1990年代以降に広まった「コア・コンピタンス経営」と深く結びついています。企業は、技術力やブランド価値といった自社の中核領域にリソースを集中的に投下し、それ以外の業務は専門性の高い外部機関に委ねることで、組織全体の生産性と柔軟性を高める戦略を取るようになりました。BPOは、こうした戦略的判断を支える手段のひとつとして位置づけられています。
近年では、BPOの受け皿としてオフショア拠点の活用が進んでいます。とくにアジア諸国を中心に、労働コストの優位性や英語対応力、IT人材の豊富さなどを背景に、オフショアBPO市場が拡大しています。
BPOを委託する目的
企業がBPOを導入する根本的な目的は、限られたリソースを競争力の源泉となる業務、つまりコア業務に集中させることです。人事や経理、情報システムなどのノンコア業務は、企業活動を支える上で不可欠である一方、それ自体が競争優位性につながるケースは多くありません。これらの業務を外部の専門業者に委託することで、企業は自社の強みをさらに深め、成長のための活動に時間と労力を注ぐことが可能になります。
また、外部に委託することで得られるのは単なる人的なリソースの削減にとどまりません。業務品質の向上、業務の標準化、処理スピードの改善など、業者の専門性を活かすことで、自社内だけでは実現しづらい成果を得ることもできます。
BPOとアウトソーシングの違いとは?
まず前提として、BPOはアウトソーシングの一形態であり、両者はまったく別の概念というわけではありません。アウトソーシングとは、企業が自社の業務の一部を外部に委託する行為全般を指します。その範囲は幅広く、たとえば清掃業務や社内システムの保守、配送業務など、特定の作業単位での委託も含まれます。
これに対して、BPOは「プロセス=業務の流れそのもの」をまとめて外部に委託するという点で、より体系的で戦略的なアプローチを取ります。たとえば、経理業務であれば、単に帳簿記帳だけを外注するのがアウトソーシングであるのに対し、請求処理から仕訳、決算補助までの一連の経理プロセス全体を外部に委託するのがBPOです。
その他似た言葉との違い
BPOと似た概念として、「ITO(インフォメーション・テクノロジー・アウトソーシング)」、「シェアードサービス」、「BPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)」といった言葉があります。
まず、ITOとは情報システムの開発や運用・保守といったIT機能を外部に委託する形態を指します。BPOが経理や人事、カスタマーサポートなどの業務プロセス全体を対象とするのに対し、ITOはITインフラやアプリケーションといった「技術的機能」のアウトソーシングに特化しています。
次に、シェアードサービスとはグループ企業内に共通の業務を集約し、ひとつの部門や拠点で共有化・効率化する仕組みのことです。BPOが業務を社外の第三者に委託するのに対し、シェアードサービスはあくまで社内の枠組みで行われるもので、外注ではなく内製化の一形態だといえます。
最後に、BPRとは既存の業務の流れを抜本的に見直し、再設計する手法を指します。業務そのものを「どう変えるか」に主眼が置かれ、BPOのように実行までを外部に委託するとは限りません。このため、業務の可視化・標準化といった改革の“前工程”として位置づけられることが多いです。
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お問い合わせBPOの対象業務とは?

BPOは業務プロセス全体を外部に委託する手法であり、その対象範囲は多岐にわたります。ここでは、代表的なBPOの対象業務について紹介していきます。
バックオフィス業務
バックオフィス業務とは、企業活動を支えるノンコア業務を指します。こうした業務は日々発生する定型作業が多く、属人化しやすい傾向があります。たとえば、人事であれば勤怠管理や給与計算、労務管理、経理であれば決算書や帳簿の作成、月次決算、資産運用など、ミスが許されない業務でありながら、大量の処理と高い正確性が求められます。そのため、近年ではこれらのバックオフィス業務をBPOとして外部に委託する企業が増えています。
事務
事務業務とは、書類作成、データ入力、ファイリング、メール対応、スケジュール管理など、日常的な社内業務全般を指します。これらの業務の多くは定型化しやすく、作業ボリュームのわりに付加価値を生みにくいという特性を持っています。こうした背景から、事務業務をBPOとして外部に委託する動きが広がっています。これにより、処理精度と作業スピードの両面で安定した運用が可能になります。
マーケティング
マーケティング業務も、近年ではBPOの対象領域として広がりを見せています。背景には、デジタル化やチャネルの多様化により業務が複雑化・分業化したことが挙げられます。
とくにBtoB領域では、営業活動の前段階として行われるリード獲得やナーチャリングは、データ分析、メールマーケティング、ホワイトペーパーの作成など、地道で継続的な運用が求められます。こうした業務を外部のBPOベンダーに委託することで、業務の効率化に加え、カスタマーエクスペリエンスの向上も実現でき、結果として営業部門の生産性を大幅に高めることが可能です。
コンタクトセンター
コンタクトセンター業務は、BPOの中でも最も代表的な対象領域のひとつです。顧客対応を担うこの分野は、本業とは直接関係のないノンコア業務でありながら、顧客満足度や企業イメージに大きく影響する重要な接点です。外部の専門業者に委託することで、顧客との接点をいかに安定かつ戦略的にマネジメントするという、より本質的な経営課題に応えることが可能です。
IT・システム関連
BPOはもともと人手のかかる事務やコールセンター業務などが中心でしたが、近年ではIT・システム関連の分野にも広がりを見せています。
IT関連のBPOには、大きく分けて2つの方向性があります。ひとつは、システムの運用保守やヘルプデスクといった日常的なIT業務のアウトソースです。もうひとつは、RPAやAIによる業務自動化、あるいはDXそのものを加速させるためのパートナーとしてのBPOです。とくに中小企業にとっては、IT人材の確保が難しい中で、BPOベンダーを活用してIT環境を整備・維持することが、DXの第一歩となるケースが多く見られます。
BPO導入のメリット
BPOを導入することで、企業は業務の効率化やコスト削減だけでなく、戦略的な競争力の強化にもつなげることができます。以下に代表的な5つの利点を紹介します。
自社のメインの業務に集中できる
BPOを導入することで、企業は人的・資金的なリソースを収益に直結するコア業務に集中させることが可能になります。経理や人事、総務、カスタマーサポートといったノンコア業務は、重要である一方で、差別化にはつながりにくい領域です。
これらを外部の専門業者に委託することで、経営層や現場部門は商品開発や営業活動、マーケティング戦略の立案など、自社の強みを活かす業務に注力できます。また、業務負担の軽減により、従業員のモチベーションや働きがいの向上にもつながることから、結果的に組織全体の生産性が高まる効果も見込まれます。
専門分野の委託による品質の向上
BPOベンダーは、対象業務に特化してきた企業であり、蓄積されたノウハウや専任人材を活用することで、自社内では難しいレベルの成果を提供することが可能です。
BPOが対応可能な業務範囲は非常に広く、単純な定型業務(レベル:低)から、判断や調整を要する業務(レベル:中)、さらには高度な専門性や戦略性を求められる業務(レベル:高)まで多岐にわたります。たとえば、レベル低ではデータ入力や帳票整理などの作業が該当し、効率化やコスト削減に直結します。レベル中では、拠点ごとのデータ整理や月次レポートの整合性確認など、属人化しやすい領域において品質の安定化が期待できます。さらに、レベル高では、高度な分析や戦略設計などに対し、BPOベンダーの専門性やデジタル技術を活用することで、自社では困難な成果を得ることが可能です。
コスト削減
BPOはコスト構造の見直しにも効果的です。外部業者に業務を委託することで、人件費や研修費、設備維持費といった間接コストを抑えることができます。たとえば、社員の採用や教育にかかるコストが不要になり、業務繁忙期に応じた人員調整も外注先で柔軟に対応可能です。とくに、オフショアを活用すれば、為替差益や人件費の低さを活かして、より高いコストパフォーマンスを得ることも可能です。
変化への柔軟な対応
市場の変化や新たな事業展開に迅速に対応するには、柔軟な組織体制が求められます。突発的な需要の増加や人材不足、業務範囲の拡大といった課題に対し、BPOベンダーは既存の運用体制や専門スタッフを活用し、短期間で業務体制を整備できます。
とくに、繁忙期や一時的なプロジェクト対応においては、スピード感を持って人員やシステムを調達できるのが大きな利点です。こうした対応力は、不確実性の高い現代の経営環境において、企業の競争力維持に直結します。
顧客への満足度上昇
市場の変化や新たな事業展開に迅速に対応するには、柔軟な組織体制が求められます。突発的な需要の増加や人材不足、業務範囲の拡大といった課題に対し、BPOベンダーは既存の運用体制や専門スタッフを活用し、短期間で業務体制を整備できます。
BPO委託時の注意点

BPOの導入は、業務の効率化やコスト削減といった多くのメリットをもたらしますが、安易に導入すると期待した効果が得られないどころか、かえって混乱を招くこともあります。ここでは、BPOを委託する際に押さえておくべきポイントを整理します。
コストに見合っているかの確認
BPOの導入にあたっては、委託によって得られる効果がコストに見合っているかを慎重に見極める必要があります。単純なコスト比較ではなく、業務の質の向上や人材の有効活用といった“目に見えにくい効果”も含めて総合的に評価することが重要です。
たとえば、BPO導入によりコア業務への集中が進み、売上や顧客満足度が上昇した場合、その成果は単なるコスト削減以上の価値を持ちます。初期費用、月額費用、成果連動型の報酬体系など、契約形態にも注意を払いつつ、ROI(投資対効果)を継続的に評価していく姿勢が求められます。
外部委託のための準備
BPOを成功させるためには、委託先との円滑な連携を図るための準備が不可欠です。とくに重要なのが、業務内容の棚卸しとドキュメント化です。どの業務を委託するのか、どの業務は社内に残すのかを明確にし、業務プロセスの全体像を把握したうえで、業務マニュアルやルールを整備しておく必要があります。こうした準備が不十分だと、立ち上げ時に混乱が生じたり、品質のばらつきが発生したりする恐れがあります。
社内体制の整理
外部に業務を委託するからこそ、社内の体制整備はより重要になります。まず求められるのは、BPOを管理・監督する専任担当者の配置です。委託先との窓口となり、進捗管理や問題発生時の対応を行う役割が必要です。
また、BPOによって一部の業務が社内から切り離されることになるため、残された社員の業務内容や責任範囲も見直す必要があります。また、業務変更に伴っては社内の意識改革が求められるほか、必要に応じて職種の再定義や配置転換も検討する必要があるでしょう。
オフショアとニアショアを組み合わせたBPOサービスモデルについて動画でご紹介しています
詳細を見るBPO委託業者を選ぶポイント
BPOの効果を最大化するためには、信頼できる委託先の選定が欠かせません。ここでは、業者選定時に押さえるべき代表的なポイントを紹介します。
対象業務が一致しているか
BPO業者選定の第一条件は、自社が委託したい業務と業者の得意分野が一致しているかどうかです。BPOベンダーには、経理、人事、カスタマーサポートなど特定領域に強みを持つ企業が多く、汎用的な対応では業務品質が期待通りに確保できないことがあります。
たとえば、医療や金融業界の業務では法令遵守や専門性が求められ、それに対応できる業者でなければ委託によるリスクが増大します。業務の適合度を見極めるには、RFP(提案依頼書)を用いて具体的な要件を提示し、ベンダーの対応方針や過去事例を比較するのが有効です。
導入までの速度
業務を迅速に立ち上げる必要がある場合、導入スピードはBPOベンダー選定の重要な指標となります。多くの業者では、初期の業務設計から運用開始までに3~4ヶ月かかることがありますが、緊急対応が可能な体制を整えているベンダーも存在します。
たとえば、テンプレート化された業務設計書や、事前に用意されたITインフラ、トレーニング済みの人材を抱えている場合には、短期間での運用開始が可能です。また、業者によっては段階的な導入も可能であり、リスクを抑えつつ柔軟に導入できます。
コスト面はどうか
BPO導入の効果を最大化するには、費用対効果のバランスを慎重に見極める必要があります。価格が安いからといって品質が伴わない業者を選べば、かえって再修正やトラブル対応に手間がかかり、トータルコストが増えるケースも少なくありません。
とくに注意すべきなのが、基本料金のほかに発生するオプション費用や追加作業費です。定額制なのか、従量制なのか、それとも成果報酬型なのかなどに応じて月々の支払額が変動するため、自社の業務特性に合った価格体系を選ぶことが肝要です。
実績は豊富か
委託業務が複雑であるほど、実績豊富なBPO業者を選ぶことが成功のカギとなります。過去に同業種・同業務での支援実績があるかどうかを確認する必要があります。とくに、導入事例の数だけでなく、「どのような課題をどう解決したか」というプロセスまで確認することが重要です。また、実績のうち継続契約がどの程度あるかを確認することで、顧客満足度の高さを推し量ることができます。
セキュリティ面は万全か
外部委託における最大の懸念の一つが情報漏洩リスクです。顧客情報や財務情報などを扱う場合、セキュリティ体制が万全であるかどうかは最重要事項となります。BPOベンダーの選定時には、入退室管理や暗号化通信といった物理的・技術的なセキュリティ対策に加え、組織的な管理体制や従業員教育も確認しましょう。
近年では、ゼロトラストやマルチファクター認証(MFA)など高度なセキュリティ手法に対応する事業者も増えています。契約には秘密保持契約(NDA)や情報管理規程を盛り込むのがベターでしょう。
BPOにおける委託の契約形態

BPOを導入する際には、業務内容だけでなく、どのような契約形態で委託するかも非常に重要です。それぞれ責任の範囲や成果物の定義、トラブル時の対応など、契約内容を正しく理解する必要があるでしょう。
委任・準委任契約の場合
BPOにおける委任・準委任契約は、成果物の完成ではなく、「業務の遂行そのもの」を目的とする契約です。とくに、定常的・継続的な業務や、人的リソースの提供が主目的となる場面で多く用いられます。
この契約形態では、受託者は善管注意義務(善良な管理者の注意義務)を負い、委託された業務を誠実に遂行する責任がありますが、成果に対する法的な保証は伴いません。したがって、委任・準委任契約を結ぶ際には、業務の内容や範囲、レポート頻度、SLA(サービス・レベル・アグリーメント)などを明確に規定することで、齟齬を回避する工夫が求められます。
請負契約の場合
請負契約は、BPOベンダーが特定の「成果物」を納品することを義務づける契約形態ですこの場合、成果物の完成が契約の目的となるため、品質や納期に対して厳格な管理が求められ、納品された成果に不備があると報酬が支払われない、あるいは損害賠償が発生することもあります。そのため、契約時には、成果物の定義や検収条件を細かく詰めることが、トラブル回避の鍵となります。
BPOとDXのかかわりとは?
POとDX(デジタルトランスフォーメーション)は、アプローチこそ異なるものの、相互に補完し合う関係にあります。BPOは、業務の一部を外部に委託することで、人的・時間的リソースをコア業務に集中させる手段です。一方、DXは、業務プロセスや提供価値そのものをIT技術によって革新する取り組みを指します。
BPOを通じて業務が標準化・効率化されると、DXに必要なプロセスの可視化やデータ整備が進みやすくなります。一方、DXが進むことで、AIやRPAを活用した業務の自動化や、BPOとの連携による新たなワークフローの構築も可能となります。BPOとDXはどちらか一方で完結するものではなく、それぞれの強みを活かすことで、業務変革をより加速させることができるのです。
IT運用保守のアウトソース、メンバーの育成、開発領域にも貢献
FPTのBPOサービスについて
まとめ
BPOは単なるコスト削減手段ではなく、企業の競争力を高める戦略的な施策として機能します。委託先の専門性を活かすことで、業務品質の向上や柔軟な事業運営が可能となり、DXとの相乗効果も期待できます。
導入にあたっては、自社の課題に適したベンダー選定や体制整備が不可欠です。BPOを効果的に活用するには、外部任せにせず、あくまで経営戦略の一環として位置づけ、継続的な管理と見直しを行うことが重要です。
関連リンク
- BPOサービス
https://fptsoftware.jp/services/it-management-services/bpo - FPTのOX(BPO)サービス紹介
https://fptsoftware.jp/resource-center/connect/connect-ox-service