新型コロナウイルス(COVID-19)がもたらした、あまりに突然な世界危機を経験したことがあるビジネスパーソンは、まったくいなかったでしょう。パンデミックの影響はほとんどの業界で見られますが、製造業界にまさるものはありません。移動制限、ロックダウン、ソーシャルディスタンスの要求により、製造業者は従業員の安全管理対策やリスク管理のアプローチなどを調整し、工場の運営方法を再考する必要にせまられています。
ノキア エンタープライズ(1)のプレジデントであるラガブ・セーガルは、次のように述べます。
「オフラインの対面会議をオンライン会議に変更したり、紙文書を電子文書へ切り替えるといった、デジタルソリューションに迅速に対応できる他の業種とは異なり、資産集約型産業の事業継続の鍵は、物的資産の管理にあります。コロナ禍の中、そしてコロナ収束後において、工場が真に『インテリジェント』であることを保証するためには、ビジネスリーダーは、情報技術(IT)と運用技術(OT)の融合に焦点を当てる必要があります。これは、場所に関係なく工場運営を完全に制御し、監視するために重要です。」
IT/OT(情報技術と運用技術)の融合
IT/OTの融合とは、物理的なイベント、デバイス、プロセスを制御する製造システムと、データ中心のコンピュータ―処理(2)に使用されるハードウェアおよびソフトウェアとの統合です。事実、こういった連携は最近はじまった事柄ではなく、長期にわたり、生産現場の働き方を変えてきました。エンジニアは、従来ソフトウェア開発者やシステムインテグレーターが行っていた作業を実施する必要性が高まっています。その一方で、ITスペシャリストは、製造現場にある機器やシステム上で、作業の大半を行ってきました。少なくとも、製造業の専門家は、IT部門の担当者とこれまで以上に緊密に連携していることに気が付いています。
運用チームの専門家とITチームが強く結びつくことにより、IT/OTの融合がデジタル変革戦略における主要な焦点であり、製造業の継続計画に不可欠な要素になっています。自社の生産プロセスにレジリエンスを構築したい製造業者は、ITとOTの融合を最大限に引き出すテクノロジーに投資することが必要なのです。
注力すべき技術投資
新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大状況における IT と OT の融合の背景にある原則は、企業によって異なる場合があります。しかし、心に留めておくべき3つの重要な任務があります。
- 中断のない接続性を保証
接続性は、スマートファクトリーに不可欠な要素であり、ITとOTシステム間のデータの収集、送信、処理を安全にオーケストレーションします。工場での接続性を可能にするテクノロジーは、エッジデバイス、ワイヤレスネットワーク、クラウドAPIなどのインフラストラクチャーを備えたインダストリアルIoT(IIoT)として知られています。また、収集および処理に必要なデータを管理するために、エッジデバイスとクラウドの両方で実行されているIIoTアプリケーションもあります。
IIoTは、他のすべてのテクノロジーのイネーブラーとして機能する一方、膨大な数の機器、デバイス、プロセスが一元化されたネットワークの一部でもあり、クラウドプラットフォームでは、モバイルデバイスやコンピューターを介して、遠隔地からプラント操作を制御および監視することができます。これら 2つのテクノロジーを組み合わせることで、製造システムに対して、よりシンプルかつ包括的で柔軟な制御が可能になります。また、応答性と俊敏性に優れたプロセスが可能になり、オンプレミスインフラへの投資も削減できます。その結果、品質と効率が向上します。
- 明瞭でリアルタイムの可視性を確保
産業プロセスと機械は非常に複雑になっているため、さまざまなアプローチで実験することによる失敗や中断のリスクは高くなっており、コストもかかります。また、移動制限や人手不足の状況下で、製造業者は、現場に十分な人員を配置できていない場合もあります。デジタルツインは、製品や設備に取り付けられたセンサーを使用して、現実世界の物体や状態を忠実に再現することにより、効率的にこれらの問題に対処します。
デジタルツインは、対話型シミュレーションと管理ツールのセットとして機能し、設備、システム、機器を管理しながら、パフォーマンス向上のためのデータを収集し、隣接テクノロジーのテストを行い、問題発生を事前予測します。
- データドリブン型のオペレーションの達成
接続性の向上により、製造システムは膨大な量のデータを生成し、企業はそれらを使って、貴重な洞察を得ることができます。以前は、プロセス内のマシンによって生成されたデータの集約、処理、フィルタリングには、多くの手作業が必要でした。現在では、「自動化データツール」と「データ分析プラットフォーム」の誕生により、生身の従業員への依存が大幅に減り、リアルタイムのデータ可視化、視覚化、工場オペレーションに関してタイムリーに認識することが可能になりました。
IT/OT融合を重視したテクノロジーイニシアティブの取り組みは、工場がレジリエントで安全な未来を築くために不可欠なものです。また同様に重要なのは、最終的に成功に導くのは人の力です。したがって、パンデミック後の世界におけるインダストリー4.0時代の従業員には、創造性、柔軟性、デジタルスキルが必要なのです。
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【Written by ファム・マイ・ガン 2020年11月5日】
【Reference】
- Raghav ;Saghal ;(2020). These 7 tech investments are critical to building “intelligent factories” after COVID-19.
- John Klaess (2019). IT/OT Convergence: Tips for gaining visibility in your connected factory.
- Daniel Araya (2020). How digital twins are driving the future of engineering.