ここのところ、キャッシュレス決済のシステム障害や不正引き出しなどが相次ぎ、拡大するキャッシュレス決済市場に冷や水が浴びせられている。金融領域ではFinTech(フィンテック)の台頭により、こうした決済をはじめさまざまな企業が新たな取り組みを始めており、システム障害などを経ながら試行錯誤を繰り返している状況だ。また、もともと金融ITでは、基幹系などのレガシーシステムのクラウドマイグレーションを中心に課題が多い状況だ。
こうした課題を企業が自社だけで対処するのは今後ますます難しくなってくると考えられる。金融ITの動向を把握し、解決スキルを持つ専門企業のサポートを得る必要が出てきている。
■ 本格化するレガシー移行(マイグレーション)
レガシーシステムのクラウド移行(マイグレーション)は、メガバンクにおいても進んでいる。例えば、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は、2017年1月に基幹系システムをAWSに移行させていくと明言。メインフレームやUNIXサーバなどで構成する基幹系システムのアプリケーションを1つ1つ切り出し、マイクロサービス化した後にクラウド化するというアプローチを取っている。MUFGでは2017年時点で、勘定系を含めて大小1,000のシステムを保有、このうち半数となる500を10年間でクラウドに移行させる予定だったが、その進捗は遅れており、その理由としてセキュリティの確保に時間がかかっていたからだと報じられている※1。
こうした苦労を伴いながらも、レガシーシステムマイグレーションを実施する意義は大きい。これによってシステムがモダナイズされることで、そのクラウドを基盤として新たなサービスを仕掛けられるようになるからだ。
■ 公正取引委員会や金融庁の変化
2020年4月に公正取引委員会がまとめた報告書※2において、銀行のシステムをFinTech(フィンテック)企業に開放するオープンAPI促進を表明した。銀行が持つデータを、APIを経由してネットバンキングやスマホサービスを提供する企業に提供する取り組みが求められているのである。銀行が、情報を提供するためのAPI接続をむやみに拒否すれば、独占禁止法違反の恐れがあるとけん制までしている。
銀行がメインフレームからAPIなどを使うオープン基盤に環境を移すことにより、例えばポイントプログラムの柔軟な運用が可能になってくる。一般に、給与振込口座として登録した顧客を対象に、他行宛ての振込手数料を一定回数無料にするといったサービスを提供する。時代の流れに応じて、新たなサービスを追加するといった顧客サービスの充実が可能になってくる。
金融庁も明確に姿勢を変化させている。これまではシステムの安定運用を何よりも重視してきていたが、経営に結びつくITガバナンスの構築を重視し、新技術を導入しないことのリスクを評価し始めたのである。2019年6月に金融庁が公表した資料※3では、経営陣のリーダーシップ、経営戦略と連動したIT戦略、IT戦略を実現するIT組織、ITリソースの最適化、企業価値の創出につながるIT投資プロセス、ITリスクの適切な管理を、従来のシステムの安定運用に加えたITガバナンスに関する基本的な考え方として提示している。
■ 続々と登場する新たな金融システム
2020年8月25日、経済産業省と東京証券取引所が「DX(デジタル変革 or デジタルトランスフォーメーション)銘柄2020」を発表した。前身である「攻めのIT銘柄」から数えて6回目となる。
初受賞となった「りそなホールディングス」は、セミセルフ端末設置などによって店舗のデジタル化を推進。顧客にとっての利便性を高め、従業員の業務効率を実現した。3回目となった「大和証券グループ本社」は、全社員に業務用のモバイル端末を配布し、新規口座開設など各種の申し込みをサポートした。2回目の「SOMPOホールディングス」は、イスラエルにDXに拠点を設置し、先進的な取り組みをする現地の企業と実証実験を繰り返した。ヘルスケアなどの新サービスの展開につなげている。
図:DX銘柄2020 選定企業
■ ブロックチェーン(blockchain)が変える世界
テクノロジーのキーワードとしては、ブロックチェーンの活用にも注目が集まってくる。ブロックチェーンは暗号資産(仮想通貨)の基盤技術として知られるが、金融はもちろん、他の業種へのさまざまな形式での実装が期待されている。
例えば、ウォルマートは、トレーサビリティによって食の安全を確保する仕組みをブロックチェーンで実装。ルイヴィトン(Louis Vuitton)で知られるLVMHは、高級ブランド品の真贋を証明する仕組みを構築している。
■ 専門知識を持つ企業の支援を受ける
クラウド移行、APIの活用、FinTechやブロックチェーンを絡めた新規システムの導入は、いずれも先進的な技術を活用するため、自社だけで実装するのは非常に難しい。導入を支援する経験豊富な企業を見つけるのが現実的な方法と言えるだろう。
FPTソフトウェアは、これまでアウトソーシングを通じて日本の金融機関のレガシーマイグレーションなどの取り組みを支援してきた。金融関連の技術ではブロックチェーン、RPA、デジタルアシスタント、チャットボット、人工知能(AI)や画像認識、銀行ではインターネットバンクキング、モバイルバンキング、マイクロサービスやOpenAPI、保険ではモバイルおよびデジタルエージェント、保険のIoT、証券ではデリバティブやトレーディングシステムなど豊富な経験を持つ。オラクル、TEMENOS、BankFlexなど業界を代表するパートナー製品のエキスパートでもある。2018年には米国のブロックチェーンのリーダー企業であるファクトムとともに、ブロックチェーン拡大に投資すると発表している。
テクノロジーの急速な進化を今後も続くことに加え、新型コロナウイルス感染症によって消費者生活、企業のビジネスモデルの変化も激しくなることが見込まれる。経験豊富なエンジニアを持つパートナーを見つけることの重要性が、さらに強まっているのである。
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FPTは、2020年10月8日~9日にかけてオンラインイベントとして開催される、日本最大ITフェア「FIT2020 online(金融国際情報技術展):日本金融通信社(ニッキン)主催」にも出展します。ブースへのオンライン出展に加えて、オンラインセミナーにも登壇します。オンラインブースへのお立ち寄りに加え、セミナーにも是非ご参加ください!
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【Written by FPTジャパンホールディングス 2020年9月30日】
【Reference】
- *1:山崎 宏実. “「三菱ショック」から3年、メガ銀はクラウドに乗れたのか”. 日経クロステック. 2020-06-05.
- *2:公正取引委員会. “(令和2年4月21日)フィンテックを活用した金融サービスの向上に向けた競争政策上の課題について”. 公正取引委員会. 2020-04-21.
- *3:金融庁. “金融機関のITガバナンスに関する実態把握結果(事例集)”. 金融庁. 2020-06-30.