この記事でわかること
- SAP BTPはSAP環境を拡張し、連携・分析・AI活用を一体で実現する基盤であると理解できます
- 各機能やメリット・デメリットから、クリーンコアを支える拡張基盤としての役割を把握できます
- 導入事例や成功ポイントを通じて、移行戦略や活用の方向性を効率的に整理できます
目次
SAP BTPとは何か

SAP BTPは、SAP Business Technology Platformの略称で、SAPが提供するクラウドベースの技術基盤です。SAP S/4HANAやSAP SuccessFactorsなどのSAP製品に加え、非SAPシステムや外部クラウドとも連携しながら、開発、統合、分析、自動化、AI活用を支えます。
単なる開発基盤ではなく、業務改革を支える共通基盤として使える点が重要です。ERP本体を過度に改修せず、必要な機能を外側で拡張しやすいため、標準機能を活かしながら変化への対応力を高めやすくなります。
主な機能
SAP BTPの主な機能は、大きく5つに整理できます。
- ローコード言語やプロコードによるアプリケーション開発
- ワークフローや定型作業を効率化する自動化
- SAPと他システムをつなぐ統合機能
- データ蓄積、分析、可視化を支えるデータ・アナリティクス
- 予測や生成を含むAI活用
これらを組み合わせることで、部門単位の改善から全社DXまで段階的に進められます。また、必要なサービスだけを選んで活用しやすく、PoC(Proof of Concept:概念実証)から本格導入へ拡張しやすい点を強みとしています。
SAP BTPを導入するメリット・デメリット
SAP BTPは多くの利点がある一方で、導入前に把握しておきたい注意点もあります。重要なのは、機能の多さだけで判断せず、自社課題との相性で見極めることです。ここでは、代表的なメリットとデメリットを整理します。
メリット
SAP BTPのメリットは、SAPの標準機能を保ちながら必要な拡張を進めやすいことです。ERP本体に手を入れすぎずに周辺機能を追加できるため、アップグレード時の影響を抑えやすく、いわゆる ERP本体に極力手を加えず周辺拡張する設計思想であるClean Coreの考え方とも相性があります。また、APIや各種サービスを活用して他システムと連携しやすく、データ分析や自動化、AI導入まで1つの基盤で広げられるため、個別最適に陥りにくい点も強みです。部門ごとに別々のツールを増やすのではなく、将来の拡張まで見据えて基盤をそろえやすいことも、導入効果の大きなポイントです。
デメリット
一方で、SAP BTPは導入すれば自動的に成果が出るわけではありません。利用するサービスの種類や量によって費用構造が変わるため、事前に運用イメージを固めないとコストを把握しにくい面があります。また、従来のアドオン開発とは設計思想が異なるため、社内に知見が少ない場合は学習コストや立ち上げ負荷が発生します。さらに、何を標準に残し、何をBTPへ移すのかの判断を誤ると、かえって構成が複雑になる恐れもあります。既存資産の棚卸しと役割分担の整理が欠かせません。
SAPの2027年問題とは
SAPの2027年問題とは、SAP ERP 6.0の標準サポートが2027年末に終了することを指します。SAPではその後も、有償の延長サポートにより最大2030年末までの保守提供が予定されています。長年の運用でアドオンが増えた環境では、S/4HANA移行の難易度が上がりやすく、移行後の継続運用にも影響します。
単に移行先を決めるだけでなく、移行後も継続的にアップデートへ追随できる構成に見直すことが重要です。そこで重要になるのが、ERP本体は標準を保ち、必要な拡張はSAP BTP上で実装するClean Coreの考え方です。この方針を意識しておくと、将来のアップデート対応や新機能活用を進めやすくなります。
FPTはSAPソリューションの支援実績も豊富
FPTは、SAP領域で150件超のグローバルプロジェクト支援実績を持ち、1,600人超のSAPエキスパートと1,250超のSAP認定資格を有しています*。コンサルティング、導入、移行、グローバルロールアウト、AMS(Application Management Services)まで幅広く対応しており、日本企業の複雑な要件にも対応しやすい体制を整えています。
さらに、SAP BTP分野では日本市場向けに専門体制を拡充しており、2027年に向けた人材育成と支援強化を進めています。要件整理から設計、実装、運用保守まで見据えて伴走できる点は、体制面の強みといえます。
*2026年6月16日 現在
SAP BTPの導入が適している企業
SAP BTPの導入が特に適しているケースとして、以下のような企業が挙げられます。
- SAP本体の改修を最小限に抑えてクラウド化を推進したい企業
- 既存のアドオンを柔軟に組み合わせ、時流に適した高い拡張性を実現したい企業
- SAPと他のクラウドサービスを連携させ、独自性の高い業務プロセスを構築したい企業
- 社内外のデータを統合し、AIを活用して意思決定の迅速化を図りたい企業
一方、SAP本体を保有していない企業や、独自性・柔軟性の高い環境を構築する必要性が少ない企業の場合は、汎用的なPaaSを採用した方が、コストメリットが高いケースもあります。自社のIT環境を把握し、目指すべき体制を明確化したうえで、SAP BTPの導入を検討すると良いでしょう。
SAP BTPに必要なアドオンとは
SAP BTPを検討する際に誤解されやすいのが、「BTPを使えばアドオンが完全になくなるのか」という点です。実際には、企業独自の業務要件がある以上、拡張機能そのものがゼロになるとは限りません。
ただし、従来のようにERP本体へ直接組み込むのではなく、SAP BTP上でサイドバイサイド拡張として実装することで、標準機能との分離を図れます。その結果、改修影響を抑えやすくなり、保守性や再利用性の向上も期待できます。加えて、将来的に拡張機能の見直しや入れ替えが発生した場合も、本体への影響を小さくしやすくなります。必要なのは、不要なアドオンを減らし、本当に必要な拡張だけを適切な場所へ再配置する視点です。
FPTのSAP BTPの成功事例と導入支援体制
SAP BTPは、構想段階の概念にとどまらず、すでに多くの企業で移行、標準化、業務高度化の実務に活用されています。ここではFPTの代表的な事例と取り組みをご紹介します。

成功事例:製造業のClean CoreとBTP活用
SAP BTPを活用した大手製造業の事例では、BTPを中核にClean Coreを志向した導入が採用されています。日本本社にS/4HANA Private Cloud、海外にPublic Cloudを組み合わせ、Fit to Standardを徹底しながらグローバル展開を支援しました。数千規模におよんでいたアドオンは800未満に抑えられ、ワークフロー、フォーム、連携、モバイルAPI、MDMなどの追加機能はBTPを中心とした拡張基盤上で整備されています。ERP本体の複雑化を避けつつ、必要な業務拡張だけを柔軟に実装する進め方は、多拠点展開を目指す企業にとって有力な方法です。
導入支援体制:SAP BTP支援サービス
FPTは2025年から日本国内で「FPT BTP Park」プロジェクトを開始しました。SAP S/4HANA Cloudの導入・移行を進める企業に対し、SAP BTPに関する知識、経験、人材を技術支援や育成プログラムとして提供する取り組みです。
背景には、日本企業でSAP刷新が加速する一方、クラウド、API、UI/UX設計に精通した人材が不足しているという課題があります。2025年に1,000名、2027年までに3,000名体制を目指し、コンサルティングから開発、運用・保守までを一貫して支援することで、日本企業のClean Core戦略の実現とSAP導入プロジェクトの成功を後押しします。
【関連プレスリリース】
⇒FPT、SAP BTPリソース体制を3,000名へ
SAP BTPを含むSAPサービスの全体像や導入支援内容について詳しくご紹介しています
よくある質問
SAP BTPの検討時によくある疑問をまとめます。社内説明や導入初期の整理にも活用できる基本論点です。
SAP BTPとSAP S/4HANAの違いは何ですか
SAP S/4HANAは企業の基幹業務を担うERPであり、SAP BTPはその周辺で拡張、連携、分析、自動化、AI活用を支える技術基盤です。言い換えると、S/4HANAが業務の中核、BTPが変化に対応する拡張基盤です。
【関連記事】
⇒SAP - ERPシステムの意義、導入のメリット、製品の特徴について
SAP BTPの費用はどのように決まりますか
SAP BTPの費用は、利用するサービスの種類、使用量、契約形態によって変わります。PoC段階と本番運用では必要な構成も異なるため、導入前に対象業務、接続先、利用ユーザー数を整理し、見積もり条件を明確にすることが重要です。
SAP BTPを導入すればアドオンは完全になくせますか
完全になくせるとは限りません。重要なのは、すべてを無理に標準化することではなく、標準で実現できる部分と、競争力の源泉として拡張すべき部分を切り分けることです。BTPは、その拡張をERP本体から分離しやすくするための基盤です。
まとめ
SAP BTPは、SAP環境の拡張、連携、分析、自動化、AI活用を支える基盤であり、S/4HANA移行や2027年問題への備えを考える企業にとって有力な選択肢です。特に、ERP本体を標準に保ちながら必要な機能だけを外側で実装する考え方は、将来の保守性と柔軟性の両立に役立ちます。
導入にあたっては、現状のアドオン、接続システム、業務優先度を整理し、どこから着手するかを明確にすることが重要です。自社に必要な範囲を見極め、移行計画とあわせて段階的に進めることが成功の鍵です。
この記事の監修者・著者:FPTコンテンツ制作チーム
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