新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大が世界中の医療業界に多大な影響を与えている昨今、医療サービス機関は、回復力のあるシステムを確保し、起こりうる混乱を回避するためのソリューションを模索しています。
ヘルスケア業界は、新型コロナウイルスがもたらした問題に直面し、この新たな状況への早急な適応を余儀なくされるという途方もないプレッシャーにさらされています。この異常な状況は、すでに非常に多くの課題を抱えているシステムに対して、さらなる負担を強いています。例えば、患者と医療機関の間の効果のない連携、事務処理のダウンタイム、医療履歴統合の欠如などが挙げられます。
そのため、医療機関は、急増する医療ケアの要求に対処するため、迅速に拡大でき、プロセスを合理化し、安全で柔軟なシステムを確保するという必要に迫られています。今すぐにでも変革に着手すべきであることは明らかです。
ヘルスケアシステムのクラウドへの移行
医療技術のイノベーションは極めて重要です。テクノロジーの進歩は、日常業務の自動化から病気の診断まで、さまざまな点でヘルスケア業界の運営を強化しています。しかし、その潜在的な可能性と能力は、いまだ十分に認識されていません。感染拡大が到来したことで、現在の健康危機に対処するための順応性が高いインフラストラクチャの必要性がこれまで以上に高くなっています。このような状況下、その解決策はクラウドサービスにあります。
- リモートネットワークアクセス:ヘルスケアエコシステムは、多数の病院とクリニックで構成されています。ヘルスデータはさまざまな異なるソースから収集されるため、介護者は患者の健康記録に即座にアクセスできないのが現状です。このような中、クラウド上に医療システムを構築すると、医療記録にどこからでもアクセスでき、高度に利用可能なデジタルデータウェアハウスに一元化することができます。これにより、遠隔診療ソリューションと遠隔医療相談の実現を容易にし、診断の遅延リスクを低減させ、患者ケアの質を向上させます。
- スケーラビリティ:パブリッククラウドサービスは、特にITシステムへの投資を重視しない医療機関にとって、オンプレミスインフラストラクチャが追随することができない高レベルのスケーラビリティを実現します。リアルタイムに、要求に応じてスケールアップまたはスケールダウンできる柔軟性のあるテクノロジーインフラストラクチャを確立します。これによって、予測困難な医療ケア件数の変動と同期することが可能になります。
- 合理化プロセス:クラウドサービスにより、各企業はインフラ管理に費やす工数を軽減できます。プロセスは、事務処理やデータ管理への人間の関与を少なくすることで、合理化されます。すべての医療機関が目指すべき目標は、より「患者中心」になるべきであるという点において、運用に費やす時間が少ないということは、患者のケアにより多くの時間を費やせるということを意味します。
クラウドが医療業界をどのように変革しているのか
クラウドコンピューティングは、間違いなく医療業界をより望ましい形で変革してきました。ここでは、世界中の医療提供者がクラウドコンピューティングの利点を活用して、大きな成果を達成した典型的な例をいくつか紹介します。
- 患者と医師の連携強化:複数の病院とクリニックのエコシステムを有する世界的な大手医療機関は、最近、クラウドベースのアプリケーションを開発して、データフロー合理化と連携強化を実現しました。この医療機関は毎日数千人の患者に対応しているため、介護者は適切なデータを適切なタイミングで入手する緊急の必要性に迫られていました。これらのアプリは、患者と医師の双方が24時間365日いつでも利用できるデジタルゲートウェイとして機能し、ダウンタイムがほぼ発生せずに、迅速な診察予約、カルテへのアクセス、各種リクエストの送信およびサポートを提供しています。
- 患者データ保護の改善:米国カリフォルニアに本拠を置く大手医療グループ(1) は、患者が自身の個人情報の取り扱いに懸念を持っていることを理解していたため、8,000ものシステムと約4ペタバイトのデータをクラウドに移行することを決定しました。この移行には、クラウドベースの運用への移行も含まれます。これにより、スパム対策プログラムや電子メールの多要素認証の実装など、患者データ保護のためのさらなる革新が可能になりました。
- 医薬品管理のデジタル化推進:処方箋を効果的に管理する方法は、患者と医療機関の双方にとって真の課題です。医療システムの関係者間の連携を強化するために、あるオーストラリア企業は、140万名以上のオーストラリアの人々を薬局や医師と”接続”する医薬品管理プラットフォームを開発することで、患者が安全かつ効果的に薬品を使用できるようになりました。このシステムは、保険申請のために同国政府のサービスとも統合されています。
将来の展望
最近のレポート(2) によると、ヘルスケア向けクラウドコンピューティング市場は、18.1%の年平均成長率(CAGR)で、281億ドル(2020年)から647億ドル(2025年)まで成長すると予測されています。このような成長の最大の要因は、ヘルスケア向けクラウドコンピューティング市場におけるSaaSサービスの需要の高まりにあります。同時に、クラウドコンピューティングがビッグデータ運用を可能にするため、クラウドベースの分析ツールは、ヘルスデータから実用的なインサイトに変換して、医療機関が患者のより適切な管理できる支援を行う有望なソリューションとなります。
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【Written by Tran Trang Linh 2020年11月5日】
【Reference】
1.A security success story: Using cloud migration to improve data protection