SAPに関するコンサルティングや開発・移行等の実績多数のFPTがABAP Test Cockpit(ATC)について解説します

目次

 

はじめに

インダストリー4.0の爆発的な広がりの中、大企業はデジタル変革の圧力に直面し、高品質なソフトウェアは、デジタル変革を実現させるために必要なピースとなります。しかし、高品質のソフトウェアを作るためには、正常に動作し、エラーが発生しないようにする必要があります。

プログラムにエラーが発生したら、システムにどのような影響が出るか、想像してみましょう。
通常、システム内のレポートやプログラムは互いに関連しています。そのためカスタムレポートからであれ、標準プログラムの修正・更新からであれ、エラーが発生した場合、ビジネスプロセスに深刻な影響を与えます。また、データにも深刻な影響を与え(データの差異など)、特にトランザクションデータも影響を受け、レポートのエラーにつながる可能性があります。よって、ソフトウェアの品質保証は、企業にとって非常に重要なものとなっています。

以上の点を理解した上で、SAPは、システム内のプログラム品質の確保を最優先の基準として、ABAP Test Cockpit(ATC)と呼ばれる障害診断用のツールキットを開発しました。それでは、ATCとは何か、どのように動作するのか、について解説していきます。

ABAP Test Cockpit(ATC)とは

ABAP Test Cockpitは、ATCとも呼ばれ、SAPシステムに組み込まれているツールセットであります。プログラマーが開発したプログラムを簡単にテストすることができ、エラーや、SAPシステムからのバージョン変更時に発生する可能性のあるリスクを早期に検出することができます。
ATCを使えば、プログラムの文法に間違いがないか、パフォーマンスに問題がないか(動作が遅い、最適化されていない)、命名規則に従っているか、などを簡単にチェックすることができます。

ABAP Test Cockpit(ATC)のメリット

ATCを使用することで、下記のことが実施できます。

  • 各プログラムのローカルテスト、またはパッケージ全体のテスト。またSLINやCode InspectorのようなSAPのいくつかのツールと連携し、テストの精度の向上
  • ATC Problemビューによる詳細な結果の表示
  • 免除の処理
  • 優先度1(error)、2(warning)、3(information)に対応するエラーの優先順位をプログラマーに通知
  • QA環境または本番環境にリリース、インポートする前の輸送依頼の確認

SAP GUI上でATCプログラムを実行すると、下図1のような概要表が出来上がります。

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図1:SAP GUI環境でのエラー概要

SAPのバージョンアップに伴い、ATCもFiori Launchpad上でCustom Code Migrationという名前で更新されています。Fiori Launchpad上でATCを使用することは、SAP GUI上で使用することと同様です。しかし、Fiori上に構築されたインターフェースは、より直感的で使いやすく、テーブルやグラフから出力されるデータは、プログラマーの見積もりやエラー数の計算、プログラムやレポートの問題を修正するためのリソース配分を計画するのに役立ちます。

Analyze Findingアプリケーションを使用して、SAP Fiori上でATCチェックの概要を確認できます。詳細は、下図2をご覧ください。

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図2:FIORI Launchpad環境でのエラー概要

FPTとABAP Test Cockpitの展開の問題

現在、FPTのデジタル変革プロジェクトには、 System Conversion(BrownField) とImplementation(Greenfield)の2つの形態があります。

System Conversionグループ

本プロジェクトでは、基本的にお客様があらかじめSAP ECCシステムを運用しており、FPTがSAP S/4HANAバージョンへの移行を担当することになります。このようなコンバージョン案件では、どのレポートやプログラムを新システムに移行べきかが最も難しい問題となります。

この場合、FPTでは、よく使うレポート/プログラム、ほとんど使わないプログラム、全く使わないプログラムをリストアップします。その次に、Central Systemと呼ばれる診断システムを構築します。この診断システムは、ATCで該当のサテライトシステム(SAP ECC、SAP S/4HANA)のエラーチェックを行うために、特定のパラメータ、またはSAPが提供する標準を使用してATC設定されます。

診断システム(Central System)は、SAP ECCシステムだけでなく、該当のS/4HANAと連携します。これによって、System Conversionを行った後に、どのレポートやプログラムが再利用可能で、どのレポートのリフレッシュや修正が必要かを診断することができます。診断システムの結果によって、FPTはSAP S/4HANAシステムへの移行中にエラーを修正するための計画を立て、適切にリソースを割り当てます。

レポート/プログラムのグループごとに確認・診断した後、ECC版からS/4HANAへのレポートを移行し、診断システムで検出されたエラーをステップ・バイ・ステップで修正します。一般的なエラーは、古い構文、論理エラー、新バージョンで使用されなくなった標準テーブルに発生するエラーなどです。最終結果は、SAP S/4HANA環境で使用可能な完全なレポートとなります。詳細は、下図3をご覧ください。

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図3:異なる2つのシステムでのエラー診断

Implementationグループ

Implementationグループのプロジェクトについては、FPTが全く新しいSAP S/4HANAシステムを構築します。この場合では、開発中のレポート/プログラムの品質をどう管理するかが問題になります。

開発環境で開発されたレポートは、QAシステムに移行する際にエラーがないか、またはお客様にリリースされるものが完成版であるかを確保するために、QA環境に持ち込む前に検証・確認する必要があります。そのために、FPTは開発環境上で直接ATCを設定します。エラー診断パラメータは、FPTが構築したカスタムバージョン、またはSAPが提供する標準的なもので、命名規則、パフォーマンスエラー、システムに影響を与えるエラー、古い構文、将来発生する可能性のあるエラーなどが含まれます。

ATCによる故障診断後、要件を満たしたプログラムを(QAシステムで)QA、または本番環境に移送し、テストプロセスを実行するか、(本番システムで)お客様に使用していただくためにリリースします。不具合のあるプログラムは、完成するまでFPTが修復し、テスト環境へ移送、または本番環境へリリースし、お客様にご使用いただきます。
詳細は、下図4をご覧ください。

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図4:S/4HANAシステムでのエラー診断

終わりに

今回はABAP Test Cockpitを用いた品質管理について解説記事を作成しました。
20年以上の経験を持ち、日本、韓国、シンガポール、マレーシア、ドイツ、スロバキア、アメリカなど世界各地にいる優秀な人材とともに、FPTは国際市場で徐々に地位を確立しています。そのため、現在のデジタル変革プロセスにおいて、最も包括的なソリューションをお客様にお届けすることができると信じています。

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