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生成AIから真のビジネス価値を引き出す:CIOのための主要インサイト

世界中の企業が生成AI(GenAI)の導入を急ぐ中、多くの企業が直面している課題があります。それは「本当のビジネス価値とコストをどう測るのか?」という点です。Gartnerの2025年レポート「CIOが生成AIユースケースのビジネス価値とコストを算出する方法」は、この問いに対して体系的なアプローチを提供しています。本記事では、その主要なポイントを要約し、日本企業のデジタル変革をリードするCIOやITリーダーに向けた実践的な提言をお届けします。
1. 生成AIユースケースは3分類で考える:Defend・Extend・Upend
Gartnerは生成AIのユースケースを以下の3つに分類しています:
- Defend(守る):特定の業務に特化した効率化(例:コーディングアシスタント、コパイロット)
- Extend(拡張する):既存プロセスの強化(例:カスタマーサービスや営業支援)
- Upend(転換する):市場そのものを変革する取り組み(例:新薬開発におけるカスタムLLM)
この枠組みによって、CIOは自社の戦略に即した投資判断が可能になります。
2. ROI(投資対効果)は重要だが、測定が難しい
Gartnerは、ROIが経営層にとって最重要関心事である一方で、その測定が最も難しいという実態を指摘しています。実際、調査では約40%の組織が「生成AIの成果を評価する自信がない」と回答。
重要なのは、生産性の向上=ビジネス価値ではないということ。本当のROIは「売上成長」「顧客維持率」「市場投入までのスピード」など、具体的な成果に結びつく必要があります。
3. TCO(総所有コスト)を正しく理解する
TCOは単なる導入費用ではありません。車を購入するのと同じく、燃料・保険・メンテナンスなど継続的な支出が含まれます。生成AIにおけるTCOの内訳は以下の通りです:
- アプリケーション:カスタム開発、既存システムとの統合
- モデル:ファインチューニング、事前学習、推論
- データ:準備、エンジニアリング、インフラ整備
- コンピュート:クラウド、GPUコスト
- ユーザー:教育、ライセンス、チェンジマネジメント
4. 代表的ユースケースのコストと価値指標
コストと価値のバランスを把握することは、投資の優先順位付けに役立ちます。以下はGartnerによる参考値です:
- コーディングアシスタント:初期費用 約115,000ドル〜、年間1ユーザーあたりの価値 1,700〜3,200ドル
- マーケティング向け生成AI:初期費用 45〜75万ドル、年間1ユーザーあたり 6,500〜12,300ドル
- AIエージェントによるサポート:初期費用 250〜440万ドル、年間1エージェントあたり 11,000〜27,000ドル
初期段階の企画やROIモデル構築時の参考となります。
5. CIOへの実践的アドバイス
Gartnerは、生成AIプロジェクトをポートフォリオ戦略として運用することを推奨しています:
- Defend型:コストセンターとして管理
- Extend型:プロフィットセンターとして運用
- Upend型:リスクを取る投資案件として管理
さらに成功に向けて、以下の要素も不可欠です:
- AIに適したデータとインフラの整備
- ガバナンスと倫理基準の構築
- 組織全体でのチェンジマネジメント
まとめ
今後、生成AIの差別化要因は「どのモデルを使うか」ではなく、「それをどう活用するか」に移っていきます。データ、組織、人材としっかり連携させることで、真の競争優位を築くことができます。
FPT Japanでは、生成AIの導入・活用を検討する企業様に向けた支援を行っております。ぜひ、お気軽にご相談ください。
生成AI導入の個別相談や導入支援に関しては、FPT JapanのAIチームまでお問い合わせください。
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